ジャストシステムが社運を賭けて開発したXML文書の作成・編集ソフト「xfy」が、BI(ビジネス・インテリジェンス)システムの構築ツールとして採用され始めた。発売当初はシーズ先行の感があったxfyだが、ようやくユーザー企業の支持を得られつつある。

 「複数の工場の生産管理データをリアルタイムに把握できるし、それを社員間で共有するのも容易。こうしたシステムを望んでいた」。こう語るのは、電子部品を製造・販売する日本ケミコンの鈴木則孝 情報システム部一グループ専門マネージャーである。

 同社は現在、xfyを使って情報系システムを構築している。コンデンサの原材料の生産管理情報をリアルタイムに分析するもの。すでに主力製品であるアルミ電解コンデンサの生産管理情報分析システムについては、国内だけでなくアジア地域の工場に展開済みだ。

 システムは、工場ごとに構築した生産管理システムから、生産管理データをXML形式で集める。これらを表やグラフの形式で閲覧できるようにした。経営者なら数カ月単位、現場の課長クラス社員は週単位など、利用者の役職に応じて表示を変えることも可能だ()。日本ケミコンは、この表示・分析部分をxfy で開発した。

図●日本ケミコンは、既存のBIツールにない簡便さやリアルタイム性を評価して、xfyを採用した
図●日本ケミコンは、既存のBIツールにない簡便さやリアルタイム性を評価して、xfyを採用した
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 日本ケミコンをはじめ、xfyの採用企業は30社を超えた。今年夏以降、稼働が相次ぐ。

 ジャストがxfyを発表したのは2005年11月のこと。当初はジャスト自身、技術開発が先行し、明確な用途を打ち出せていなかった。このため、第1号ユーザーは、なかなか現れなかった。

 ここにきてようやく導入が進み始めたのは、利用の簡便さやリアルタイム性が評価され始めたからだ。xfyは、XMLデータの入力・分析画面を、ワープロ・ソフトと同様な使い勝手で設計したり編集したりできる。作成した分析画面のファイルは、電子メールで利用者に配布可能だ。

 日本ケミコンでは当初、専用BIツールやExcelの利用を検討した。しかし、「BIツールは利用部門にとって使いこなすのが難しかった。Excelで作ったアプリケーションは、拠点ごとにExcelのバージョンが異なり、グローバル展開が難しいのが問題だった」(鈴木マネージャー)という。

 xfyのXML処理機能も、ユーザーに評価されている。クライアント・ソフトは、XMLにおけるさまざまなボキャブラリ(業界や用途に応じて策定されたデータ定義)を解釈・表示できる。財務情報を記述するXBRL、数式を記述するMathML、図形記述用のSVGなどだ。ジャストの浮川和宣社長は、「xfyほど汎用的なボキャブラリ解釈エンジンは、他に例がない」とする。

 xfyにはまだ、既存システムのデータをXML化する手間がかかるなど、課題も残っている。ジャストは、すでに約40社に上るパートナー企業に働きかけるなどして、ユーザー企業の導入負荷の軽減を図る考えだ。