SAN(Storage Area Network)スイッチ大手の米Brocade Communications Systemsは10月23日,データ・センターにおけるネットワーキング基盤のコンセプト「Data Center Fabric」(DCF)を発表した。DCFの具体的な実装手段と完成イメージは定かではないが,同社でCTO(最高技術責任者)兼副社長を務めるDan Crain氏は,DCFによってサーバーとストレージの接続やサーバー間接続といったデータ・センターのネットワーク接続形態が,今以上にシンプルになると語った。

 DCFを実現するための第一弾製品として同社が用意したのは,同社のSANダイレクタ・スイッチである「Brocade 48000」向けの,転送速度8Gビット/秒のFC(Fibre Channel)ブレード。既存製品の転送速度4Gビット/秒をより高めたものであり,1台の物理サーバー上で複数の論理サーバーを動作させるサーバー仮想化時代において特に需要が高まっているという。同社は以前からWDM(波長分割多重)など特別な需要のために10Gビット/秒のFC製品を用意していた。だが,データ・センター向け製品の転送速度は4Gビット/秒が最高だった。

 こうしたDCF関連の発表の中で,Dan Crain氏は,気になる技術を解説した。ファイバ・チャネルのために使われるFCプロトコルを,汎用のネットワーク接続などに使われるイーサネット・プロトコルの上で利用するための規格「Fibre Channel over Ethernet」(FC over Ethernet)である。米Brocade Communications Systemsを含む業界各社が2007年4月5日に,ANSI(米国規格協会)のFC統括部門であるT11委員会に提出した規格であり,現在IT業界においてそれなりにホットなトピックとなっている。

 FC over Ethernet(イーサネット上のFC)という名称を聞いたとき,てっきり記者は,現在利用中のL2スイッチやNIC(Network Interface Card)など既存のイーサネット製品を利用できる規格なのだろうと思っていた。主に遠隔拠点のSAN同士をIP網で接続するためのゲートウエイ製品として,IPプロトコルでカプセル化するFCIP(FC over IP)という使い方がすでにある。FC over EthernetもFCIPと同じように,FCをイーサネット・フレームでカプセル化するだけの使い方だと思っていた。

 ところがDan Crain氏はFC over Ethernetについて,既存のイーサネット製品の機能を拡張した新しい製品が必要になると解説した。詳細は不明だが,FC over Ethernetを考慮していない既存のイーサネット製品では,いくつかの要求仕様を実現することが難しいのであろう。ちなみに,FCプロトコルは,レイヤー1の物理層とレイヤー2のデータリンク層を規定したプロトコルであり,SCSIコマンドなど上位プロトコルを解釈するインタフェース機能も備える。考えてみれば,FCをレイヤー3のIPプロトコルでカプセル化するFCIPよりも,レイヤー2プロトコルでレイヤー2プロトコルをカプセル化するFC over Ethernetの方が,実装依存が大きくなりそうではある。

 その一方で,FC over Ethernet対応のイーサネット製品は,既存イーサネット製品のスーパーセットに相当するため,そのイーサネットの代替品としても利用できるようだ。例えば,サーバー間接続もFCストレージ接続も,(1枚で済ませるかどうかは別問題として)同じNIC製品で実現できることになる。

 もちろん,実際にどのようなネットワークを使うべきなのかは,時代や用途によって異なってくる。2007年10月現在,サーバー間接続ではInfiniBandとイーサネットの2つが争っており,ストレージ接続ではFC(FC-SAN)とiSCSI(IP-SAN)が争っている(このほか,I/OケーブルによるDAS,直接接続もある)。巷(ちまた)では,サーバー間接続においてもストレージ接続においても今後の主流はイーサネットであると見られている。だが,どうなるのかはまだ分からない。記者はそう考えている。