無線LANスイッチは技術競争が激しく,最近は機能面の差が少なくなっている。しかし,APをまとめて管理する製品だけに,管理ツールの充実度や使い勝手は選択時の重要なポイントとなる(図1)。必ず見て触って試すようにしたい。

図1●管理ツールの搭載機能および使い勝手
図1●管理ツールの搭載機能および使い勝手
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 昭和大学の小倉氏は研究や教壇に立つかたわら学内のネットワーク機器の運用作業を受け持っている。付きっきりでシステムの面倒を見ることができないため,「異常が発生したとき,異常が起きた機器を視覚的にいち早く示してくれるツールなのかなどを重視した」という。遠く離れた図書館に設置したAPがハングアップした際には,「遠隔操作でAPを再起動して対処できた。現場まで駆けつける必要がなく重宝している」と米Trapeze Networks製品のツールに満足している。

 浅井興産の北山由美氏(管理部 副部長)も管理ツールを重視した。APの管理で苦労してきた経験があるためだ。北山氏は5年近く一般消費者向けのAP7台を工場で運用していた。「APがハングアップしたら,設置した現場まで出向き,再起動していた。APごとにESSIDやWEPキーを設定しなくてはならず,定期的にWEPキーを変更するところまでとても手が回らなかった」と打ち明ける。

 北山氏は現在,計39台のAPを米Aruba Wireless Networks製の無線LANスイッチで管理している。管理対象のAPは以前の5倍以上に増えたが,「複数のAPを一括管理できるので,ほとんど手がかからない」と効果を実感している。

 無線LANスイッチには,Webブラウザ上で閲覧・操作する管理ツールを標準で備える製品が多い。各種の設定情報やトラフィックを簡易表示できるツールが主で,電波のカバー範囲や電波強度を視覚的に表示するサイト・サーベイ機能は有償ツールとして提供しているケースが多い。その中でAruba製品は,サイト・サーベイ機能なども標準で備えている。

重要なチャネル設計や干渉対策

 2006年1月にオフィスをフリー・アドレス化して,無線IP電話の運用を開始した東レACSは,無線LANチャネルの設計が容易な点などを考慮して製品を選択した(図2)。

図2●ハンドオーバー処理時間やチャネル設計の容易さ
図2●ハンドオーバー処理時間やチャネル設計の容易さ
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 機器を選定した張替孝氏(管理部 主任部員)は当初,無線IP電話の採用に消極的だった。「無線LANのチャネル設計や電波干渉対策で苦労した話を(無線IP電話を先行導入した)取引先から聞かされていた」からだ。

 そのため,張替氏は一時期,構内PHSの採用を検討していたという。しかし,PCのLANは無線化することが決まっており,アンテナや配線の工事が無線LANとPHSの二重で必要になることに悩んでいた。

 そんな折り,同氏は隣接するAPで同一チャネルを利用できる米Meru Networksの機器を紹介された。テスト環境で無線IP電話のハンドオーバー・テストを実施し,品質を確認した上で導入を決めたという。

 結果的には,この選択が奏功した。機器の導入前にサイト・サーベイを実施したところ,同社周辺で他社が利用する無線LANのAPが数十個も検出された。「同一チャネルを利用する方式でなければ,無線LANの導入をあきらめざるを得なかった」(張替氏)と振り返る。