今年の7月24日、大阪証券取引所は不祥事を起こした企業に対して社外有識者による調査委員会の設置を求めるなど独自の上場規則を制定し、10月をメドに実施すると発表しました。その目的は取引所として投資家保護の姿勢を明確にすることで、市場の信頼性をより高めることが狙いとされています。

 この「独自の上場規則」がどのような形で具体化されるのか、あるいは不祥事の定義とは何か、社外有識者による調査委員会とはどのようなものなのか。これらについての詳細な情報が出てくるのはこれからですし、同じようなレギュレーションをとるのか、東証をはじめ他の証券取引所も追随するのかは、本稿の執筆時点ではまだ明らかになっていません。

 しかしながら、最近起こった企業事件を見ていると、事件が起こった際には社外の有識者がメンバーに加わった調査委員会をつくり、そこに調査を実施してもらう方法がある種のスタンダードになっていると思います。ただし、一口に調査委員会といっても実はいろいろな種類があります。何を目的とするのか、守備範囲をどこまでとするのか、あるいはメンバーの集め方や構成をどのようにするのか…。これらの点について、さまざまなバリエーションを見いだせるのです。

 本来、このような委員会は長い会社員人生の中で一回もつくらずに済めば、それに越したことはありません。しかし、皆さんの会社で不幸にもこのような委員会をつくらなければならなくなったときに何をどのようにすればいいのか、そのための基本的な考え方とプロセスについてお伝えしていこうと思います。

 まず、調査委員会は大きく次の3つに分類できます。

1 社外の有識者を中心に構成される第三者調査委員会
2 社内主体の調査に社外の有識者を加えた調査委員会
3 社内調査委員会

 これら3つの調査委員会は、上から「危機レベル高→危機レベル低」の順番に並んでいます。要するに、会社の健全な発展や存続に対し起こった事件がどの程度の悪影響を及ぼすか、その度合いによって調査委員会のあり方も変わってくるわけです。

 大きな問題を起こしてマスコミや消費者から強い批判を受け、説明してもまともに話を聞いてもらえない。店頭からはことごとく自社製品が撤去される――。最近、企業の不祥事が起こるたびよく耳にする「社外の有識者を中心に構成された第三者調査委員会」とは、このように事態を放置すれば会社の存続自体が危ない危機的状況を迎えたときに設置するものです。

 今日にでも記者会見を開かなければいけないほど緊迫した問題ではないが、社内だけで完結するには世の中が納得しないかもしれないものへの対応としては、「社外の有識者を加えた調査委員会」があります。これは調査の公平性や妥当性を担保してもらうために社外から委員を招いて調査委員会を設置するもので、実務上たいへん有益です。

 最後の社内調査委員会は、社内の内部監査室や内部統制システムだけでコントロールするには領域が広すぎたり、複数の事業にまたがっていたりする問題が発生した際に、内部監査室だけで対応するのではなく、委員会組織を立ち上げてきちんと危機管理していこうというものです。

 これらの調査委員会は危機レベルの高低だけでなく、担う役割や守備範囲の面から見てもさまざまな多様性があります。次回からはこの点について詳しく触れていきましょう。

注)当コラムの内容は、執筆者個人の見解であり、所属する団体等の意見を代表するものではありません。

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秋山 進 (あきやま すすむ)
ジュリアーニ・コンプライアンス・ジャパン
マネージングディレクター
リクルートにおいて、事業・商品開発、戦略策定などに従事したのち、エンターテイメント、人材関連のトップ企業においてCEO(最高経営責任者)補佐を、日米合弁企業の経営企画担当執行役員として経営戦略の立案と実施を行う。その後、独立コンサルタントとして、企業理念・企業行動指針・個人行動規範などの作成やコンプライアンス教育に従事。産業再生機構の元で再建中であったカネボウ化粧品のCCO(チーフ・コンプライアンス・オフィサー)代行として、コンプライアンス&リスク管理の体制構築・運用を手がける。2006年11月より現職。著書に「社長!それは「法律」問題です」「これって違法ですか?」(ともに中島茂弁護士との共著:日本経済新聞社)など多数。京都大学経済学部卒業