APの設置位置や電波出力を決める際には,「サイト・サーベイ・ツール」を使うのが一般的だ。ツールには,オフィスの図面や壁の材質,APの仮の設置位置などをあらかじめ登録しておく。その後,ツールをインストールしたモバイルPCを現場に持ち込み,自分が立っている地点を画面上の図面で指定して電波強度を測定する。オフィス内の複数個所で測定を繰り返すと,図面上で電波の強度が視覚的に確認可能になる。電波強度に問題がある地点を見つけたら,APの配置を変えたり,APを増やしたりして調整する。

 無線LANスイッチとサイト・サーベイ・ツールを組み合わせて利用することで,電波のカバー範囲や電波強度をリアルタイムに表示したり,APの設置位置を事前にシュミレーションしたりできる製品もある。だが,無線IP電話を導入する際は,さらに微妙なチューニングを要するので注意したい。

 東レACSは,本番稼働前にサイト・サーベイ・ツールを使って実地で電波強度を調査し,オフィス内にまんべんなく電波が行き渡っていることを確認した(図1)。現場で無線IP電話の発着信を繰り返すテストも実施し,無事クリアーした。ところが,システム稼働初日にトラブルに遭遇した。「オフィス内のごく限られた場所だけ,無線IP電話の通信が不安定になり,通話が切れてしまう」(張替氏)という現象に直面したのだ。

図1●サイト・サーベイ・ツールは精度を確認して使う
図1●サイト・サーベイ・ツールは精度を確認して使う
東レACSは,カットオーバー初日に無線IP電話の通信が切れてしまうトラブルに直面した。事前にサイト・サーベイ・ツールで電波強度を調査していたが,無線IP電話の受信感度がサイト・サーベイに利用したモバイルPCと異なっていたためである

 詳細に調査したところ,スポット的に電波強度の弱い領域が見つかった。サイト・サーベイに利用したモバイルPCと無線IP電話とで受信感度に差異があり,サイト・サーベイ・ツールでは認識できなかったのである。

 そこで同社は,無線IP電話が標準搭載している電波強度を測定するツールでサイト・サーベイをやり直した。IP電話の画面に表示される電波強度を紙の図面に書き写して,電波強度の弱いスポットを探し出し,最終的にAPの設置場所を微調整することでトラブルを解消した。