オフィスのワイヤレス化に際し,「無線LANスイッチ(無線LANコントローラ)」を導入するケースが増えている。企業や官公庁・大学などが構築する無線LANでは,多数のアクセス・ポイント(AP)や無線端末を利用するため,設計や運用管理の負担が大きい。無線LANスイッチはその課題を解決するネットワーク機器である。

 無線LANスイッチのニーズが高まっているのは,企業などが無線LANの本格導入に取り組んでいるため。本格化の主な理由は三つある(図1)。

図1●オフィスのワイヤレス化に不可欠な存在となりつつある無線LANスイッチ
図1●オフィスのワイヤレス化に不可欠な存在となりつつある無線LANスイッチ
オフィスで無線LANの本格導入が相次いだことで,大量のAPを一元管理できる無線LANスイッチの必要性が高まった [画像のクリックで拡大表示]

 まず挙げられるのは,2000~2001年ごろに導入した無線LAN機器の入れ替えが始まったことである。当時は,Wi-Fi対応製品の出荷が相次ぎ,第1次無線LANブームが起きていた。「テストを兼ねて導入した企業の多くが,機器の老朽化やリースアップで,見直しを本格化している」(マクニカネットワークス ソリューション営業統括部 吉井奉之氏)という。

 機械メーカーの浅井興産は2000年ごろ,一般消費者向け製品を使って無線LANを構築し,工場内で図面データを閲覧可能にしていた。2005年の工場増設を機に,老朽化した無線LAN機器の総入れ替えを実施,それに伴って無線LANスイッチを導入した。

 また,無線IP電話の導入機運が高まっていることも大きい。無線IP電話は内線電話のコスト削減やオフィスのフリー・アドレス化を実現する。その基盤として無線LANが必要になる。

 アパレル業界向けのCAD/CAMソフトを開発・販売する東レACSは,本社の引っ越しを機に,無線IP電話を導入した。その際,無線LANスイッチによる管理を始めている。

 有線LANを無線LANで置き換える動きも出ている。無線LANシステムが以前ほど高価でなくなったためだ。

 昭和大学は2006年4月,山梨県にある富士吉田キャンパスの構内LANを無線LANで刷新し,そのとき無線LANスイッチを導入した。数社に提案を依頼したところ,有線LANを敷設する方式と無線LANを活用する方式に提案が分かれたが,「工事費を含めた総費用は無線LAN方式が安かった」と,機器選定やシステム導入にかかわった小倉浩氏(教養部 情報科学教室 助教授)は語る。

 このように導入事例が増えている無線LANスイッチ。その主な製品(2006年11月時点)を表1にまとめた。

表1●国内で販売されている主な無線LANスイッチ
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表1●国内で販売されている主な無線LANスイッチ