光ファイバ設備の貸し出しルールを巡って,NTT東西地域会社と競合事業者が真っ向から対立してきた。そのポイントは,ヘビーユーザーがいてもほかのユーザーのサービスに影響がないかどうか。光ファイバ共用の是非で平行線をたどってきた議論を一歩進めるため,ソフトバンクやKDDIなどが実証実験に踏み切った。
ソフトバンクテレコムやKDDIなどの通信事業者7社が,「PON」(passive optical network)と呼ばれる光ファイバ分岐システムを複数事業者で共用する実証実験の結果を公表した。
実験の狙いは,NTT東西地域会社が他社に貸し出している光ファイバ設備を共用すること。コストを下げて,今よりも割安なFTTHサービスの提供を目指す。実験にはこのほかに,ソフトバンクBBやアッカ・ネットワークス,イー・アクセス,TOKAI,ビック東海が参加した。
7社は共同実験で,PONを複数事業者で共用しても,ユーザーごとに上り/下りのトラフィックのQoS(quality of service)などの制御が可能であると確認。インターネット接続の際に,一部のヘビーユーザーのトラフィックがほかのユーザーに影響を与えないように制御できる,と結論付けた。
議論が続いていたPON共用の是非
この実験の背景には,NTTによるPONの貸し出し形態を巡る議論がある。NTT東西のアクセス系の光ファイバは,1心で貸し出す「専有型」と,1心の光ファイバを最低8分岐単位で貸し出す「共用型」がある。議論の対象となったのは共用型で,この方式は「シェアドアクセス」とも呼ばれる。
共用型はPONによって1心の光ファイバを八つに分岐させている。現在のルールではこの8分岐を一括で借りなければならないのだ(図1の上)。ただしこの形態では,8分岐単位で借りた設備に1ユーザーしか収容できなかった場合は割高になり,効率が悪くなる。このためソフトバンクやKDDIなど光ファイバを借りる事業者は,NTT東西に1分岐単位でバラ貸しにしてほしいという要望を出していた(図1の下)。
これらの事業者は,「8分岐一括よりも1分岐単位のバラ貸しの方が,コストが安くなり,割安なFTTHサービスを提供できる」と主張してきた。ユーザーの需要を喚起できるだけでなく,設備効率を上げられるので,NTT東西にもメリットがあるという。
ソフトバンク・グループの試算では,現行の8分岐で設備を借りて,1ユーザーだけ収容するとコストは約6000円。バラ貸しであれば,1ユーザー当たりのコストは約2000円以下に下げられるという。
仮にこの貸し出しルールが実現すれば,FTTHサービスの料金水準は大幅に下がることになる。