レイヤー2のプロトコルで近隣ノードを自動検知する仕組みは,米マイクロソフトも提供している。Windows Vistaが搭載する「LLTD」(link layer topology discovery)である。Vistaの「コントロール パネル」で「ネットワーク マップ」を起動したときに表示されるトポロジは,LLTDで取得した情報を基に描画している。

Vistaから各機器に情報を要求

 LLTDはLLDPと同じレイヤー2の近隣探索プロトコルだが,仕組みは大きく異なる(図1)。LLDPのように一方的に情報を送り付けるのではなく,トポロジを描画するMapper(Vista)と管理対象となるResponder(ネット家電など)の間で相互にメッセージをやり取りする。ユーザーがネットワーク マップを起動すると,Vistaは探索フレームをブロードキャストで送信する仕組みになっており,Responderが管理情報を返す。

図1●Windows Vistaが搭載するLLTDの仕組み
図1●Windows Vistaが搭載するLLTDの仕組み
VistaがLLTDの探索フレームをブロードキャストで送信すると,LLTDのエージェント機能(Responder)を搭載したネットワーク機器などが管理情報を返信する。その情報を基にネットワーク構成などを表示する。
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 MapperとResponderがやり取りする情報は,機器のデバイス名,IPアドレス,無線LANの情報(対応する通信規格,利用しているSSID/BSSID),管理URL,マップ上に表示するアイコンのイメージなど。これらはネットワーク マップのプロパティで確認でき,管理URLをクリックした場合は設定画面を表示する(図1右)。

 ただし,これらの情報だけではトポロジまで分からない。そこでMapperはResponderに対し,特定ノードとのテスト通信を命令する。「通信相手は独自のアルゴリズムに基づいて決めており,このテスト結果を収集,分析することでトポロジを描画する。LLTDに対応していないハブがネットワーク上に存在しても検出できる」(マイクロソフト ディベロップメント ウィンドウズ開発統括部ハードウェアエコシステムグループの長尾武司プログラムマネージャ)という。マップを描画した後はともに待機モードに入る。MapperとResponderの間で管理情報のやり取りは発生しない。

企業ではなく家庭での利用を想定

 LLTDはこのように便利な機能だが,企業での利用は想定していないという。「VistaがWindowsドメインの配下に所属している場合はLLTDが無効になる」(長尾プログラムマネージャ)ためだ。家庭のネットワークにテレビやゲーム機などを接続した際のトラブル・シューティングを支援するためのツールとして提供している。「ネットワーク マップで機器の構成や接続状況などが分かれば,トラブルの原因を大雑把に切り分けできる。トラブルとは直接関係ないベンダーに問い合わせるといった勘違いが減る」(同)。

 Responderを搭載した製品は現在,米リンクシスや台湾ディーリンク,バッファロー,アイ・オー・データ機器のルーターや無線LANアクセス・ポイントなどがある。「コンシューマ機器メーカーを中心に搭載を提案している。対応製品は1年以内にかなり増えると見込んでいる」(同)。またWindows XP向けにLLDP機能の追加モジュールも提供している。ただし,Mapperの機能はなく,Responderだけになる。