建設機械で国内シェア1位、海外でも米キャタピラーと首位を争っているコマツは、ここ数年好調を維持している。2007年3月期の決算は、連結売上高が1兆8680億円、純利益が1450億円と5期連続の増収増益、3期連続の最高益更新を見込んでいる(図1)。その成長性が買われ07年3月には、日本経済新聞の優れた会社ランキング「PRISM」で初の首位を獲得した。

図1●コマツは2003年3月期以降、急激に業績を伸ばしている
図1●コマツは2003年3月期以降、急激に業績を伸ばしている

 成長の要因はさまざまだ。第一に旺盛な海外需要に下支えされていること。加えて、その需要に応えられる商品ラインアップと生産設備を持っていることなどが挙げられる。特に商品では、2000年以降投入している「ダントツ商品」が好調だ。燃費や静粛性など分かりやすい特徴を掲げ、3~5年たっても他社が追いつけない技術を搭載した商品だ。同時に製造原価を10%以上下げ、高機能と低価格を両立させた。

 さらにもう一つ、同社の好調を支える要因として忘れてはいけないのが、顧客サポートの手厚さだ。

 世界中のどの場所に、どの種類の建機があり、どのように移動しているのか。何時から何時までアイドリング状態にあり、いつ、どのモードでパワーシャベルを使ったのか。燃料はいつ給油したのか。こうした情報をコマツは「KOMTRAX」と呼ぶシステムで把握している(図2)。そして顧客企業や販売代理店に対し、必要なデータを公開することで、サポートを充実させているのである。

図2●コマツは建機の動作状況を自動収集し、顧客サポートに役立てている
図2●コマツは建機の動作状況を自動収集し、顧客サポートに役立てている

 例えば、「お昼時に車両位置が動いていないにもかかわらずエンジンが動作していた」といったことが分かれば、顧客企業は従業員に対し、アイドリングをやめるように指示できる。ランニング・コストの低減につながる。

 販売代理店にとってのメリットは、より大きい。これまでは「何か不都合はないですか」と“ご用聞き”しかできなかった。それが「KOMTRAXのデータを見ていれば、顧客に必要なことが分かる。確度の高い商談先に対して、先回りした提案ができると喜ばれている」(笠原時次KOMTRAXグローバル推進室長)。KOMTRAXの利用を前提とすることで、販売代理店の業務の仕方を革新できたというわけだ。当然、販売代理店の利益はコマツの利益に直結する。

 サポートの手厚さは、販売時にも顧客への訴求材料になっている。建機は、1台車両を購入すると、その車両が耐久年数を終えるまで車両価格の約3倍のメンテナンス・コストがかかる。コマツはこの点に着目し、同社の建機ならばメンテナンス・コストを抑制できることをアピールする。「大きな故障に進展する前に、顧客自身もしくは販売代理店がデータから予兆に気付く」(笠原室長)というわけだ。