2007年3月期のクレジットカード新規獲得枚数420万枚、実際に使っている会員数(稼働会員数)が1255万人(記事執筆時点の見込み)――。これらの数字がともに業界トップ・クラスといわれるクレディセゾンは、2006年1月にユーシーカードと合併し、旧ユーシーカードの会員427万人を加えるなど、急拡大を続けている。

 そうした成長を支えている同社の強みの一つが、顧客からの問い合わせや要望を受け付けた際の対応力だ。見込み顧客からの問い合わせや申し込みにすぐに対応できなければ新規獲得にはつながらないし、既存顧客の満足度を上げなければ稼働会員数は増えない。

 カード会社の顧客窓口の中心はコールセンターである。そこでクレディセゾンは05年4月に「Ubiquitous(ユビキタス)」と呼ぶコールセンターを新設してオペレーションを集約。組織体制も大幅に変更し、顧客対応力を高めた最前線拠点とした。その頭脳にあたるのが新コールセンター・システム「SoRa」だ。

“前線”で顧客対応を完結

 従来、最初に電話を受けたオペレータが自分では対応できずに専門の担当者に転送する本数は年間60万本あった。例えば、顧客が海外旅行に行く際に「一時的に利用限度額を引き上げてほしい」と言ってきたとき。オペレータでは回答できず、審査部門に電話を回していた。それを、最初のオペレータが回答できる範囲を広げることで転送せずに処理できるようにした(図1)。結果、転送本数は約10分の1に減った。顧客からすれば、待たされることなくスムーズに要件を済ますことができるようになったのである。

図1●クレディセゾンはバックエンドのシステムまで作り変えることでフロント・システムを強化した
図1●クレディセゾンはバックエンドのシステムまで作り変えることでフロント・システムを強化した

 オペレータはSoRaを使うことで、カード審査や与信照会の状況、対面のセゾンカウンターを含めた過去の問い合わせ内容、督促状況をすべて画面上で確認できる。さらに、マーケティング部が送ったダイレクト・メールや請求書を画像で見ることも可能だ。従来は顧客に説明してもらうこともあったが、それを極力なくした。

 これらが可能になったのは、審査部門や督促部門のシステムとSoRaで共通のデータベースを持たせ、一部の情報を閲覧できるようにしたからだ。限度額引き上げに関する問い合わせでは、審査結果を回答できる権限をオペレータに委譲した。

 ただ、単に審査システムの情報を共有するだけでは、オペレータは限度額増額を判断できない。そこで、基幹系システムの一部である審査システムも刷新。限度額の増加を実施する際の判断基準などを整理し、自動審査のアルゴリズムを組み入れた。今は、すべてではないが、多くの場合は即時に回答を提示できる。この基幹系の強化があったからこそ、フロントエンドのSoRaが生きた。

 SoRaの導入は、オペレータの定着率を大きく向上させた。離職率が9.5%から5.7%と、4割減った。これは、顧客サポート力向上に大きく貢献する。「オペレータが研修を重ねて戦力になるのには時間がかかる」(井上裕クレジット本部クレジット計画部長)からだ。コスト削減の効果も大きい。クレディセゾンでは04年から現在までで、コールセンターにかかってくる電話の数が2割増えたが、「応答時間を短くすることは狙っていないものの、結果として1件の電話当たり20%ほど短くなった」(井上部長)ことから、オペレータはほとんど増員していない。