そもそもDNSはなぜ必要なのか。どんな役割を果たしているのか。Lesson1ではDNSの役割について考えてみよう。

IPアドレスは人間には覚えにくい

 ネットワークに接続されたコンピュータには,それぞれに「アドレス」という識別番号のようなものが付いている。このことを知っている人は多いだろう。コンピュータ同士が通信するときは,このアドレスで互いに相手を特定している。

 インターネットでコンピュータ同士が通信するときは,IPアドレスを使っている。IPアドレスは,「192.168.0.1」のように,ドット(.)で区切った0から255までの数字の組み合わせで表す図1-1)。

図1-1●コンピュータの名前とIPアドレスを結びつけるDNS(domain name system)
図1-1●コンピュータの名前とIPアドレスを結びつけるDNS(domain name system)
コンピュータを識別するとき,人間は覚えやすい名前(ドメイン名)を使う。コンピュータはIPアドレスを使う。名前をIPアドレスにひも付けるのがDNSだ。

 ただ,このように数字を羅列して表すIPアドレスは,コンピュータには扱いやすくても人間にはわかりにくい。コンピュータを指定したり管理する場面では,もう少し覚えやすい名前を付けたいところだ。

 そこで,人間にも覚えやすいように,IPアドレスとは別にコンピュータに付けた名前が「ドメイン名」だ。ドメイン名は,「www.nikkeibp.co.jp」というように,アルファベットや数字を組み合わせた文字列で表現する。これならば,人間が覚えやすい名前を付けることができる。

 そして,コンピュータの世界で通用する識別番号=IPアドレスと,人間の世界で通用する名前=ドメイン名を対応付けるしくみがDNSだ。DNSでは,DNSサーバー(ネーム・サーバーともいう)がドメイン名を基にIPアドレスを割り出してくれる

Webブラウザの要求に応答

 インターネットのWebサイトにアクセスする場合を例に,DNSの動きを見てみよう(図1-2)。

図1-2●DNSサーバーがIPアドレスを教えてくれる
図1-2●DNSサーバーがIPアドレスを教えてくれる
ドメイン名がわかっていてもIPアドレスがわからないとコンピュータにアクセスできない。DNSのしくみを使ってIPアドレスを調べる。 [画像のクリックで拡大表示]

 ここでは「www.aaa.jp」というWebサイトにアクセスするとしよう。それには,「http://www.aaa.jp」というURLをWebブラウザのアドレス欄に入力する。するとWebブラウザは,「ドメイン名がwww.aaa.jpのWebサーバーにアクセスしろということだな」と理解する。ただ,このままではWebブラウザはWebサーバーにアクセスできない。なぜなら,WebブラウザはこのWebサーバーのIPアドレスを知らないからだ。

 そこで,WebブラウザはDNSのしくみをつかってwww.aaa.jpに対応するIPアドレスを調べる。具体的には,DNSサーバーに,www.aaa.jpというドメイン名に対応するIPアドレスを問い合わせる。すると,DNSサーバーがこのドメイン名に対応するIPアドレスを調べて,Webブラウザに教えてくれる。こうしてIPアドレスがわかると,WebブラウザはこのIPアドレスでwww.aaa.jpのWebサーバーにアクセスできる。

 このように,ドメイン名からそれに対応するIPアドレスを割り出す一連の処理を「名前解決」と呼ぶ。

 DNSを使って名前解決をするのはWebサイトにアクセスするときだけではない。メールを送受信するときも同様だ。メール・アドレスの場合,「@」の後がドメイン名である。メールを送信する場合なら,送信側のメール・サーバーがあて先メール・アドレスのドメイン名をDNSに問い合わせ,あて先メール・サーバーのIPアドレスを取得して,メールを送るのだ。

引っ越してもドメイン名は変わらない

 DNSのおかげで,人間はドメイン名さえ知っていれば,相手先のコンピュータと通信できる。これには,通信する際にコンピュータの物理的な在りかの影響を受けないという利点もある。

 IPアドレスはつながるプロバイダやIPネットワークの物理的な場所によって決まるので,サーバーを移動させると変わってしまう。もしWebサーバーにアクセスするのにIPアドレスを使っていたら,Webサーバーを別の場所に移動したり,別のマシンに載せ換えたりするたびに,Webサイトにアクセスしてくるユーザー全員に新しいIPアドレスを教えなければならない。

 これに対して,ドメイン名を使っている場合は,DNSに登録されている情報を更新して,ドメイン名に対応するIPアドレスを新しいIPアドレスに変えるだけで済む。ユーザーはIPアドレスが変わったことを気にせずに,今までと変わらずWebサイトにアクセスできるのだ。