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情総研レポート

世界初のフェムトセル・サービスが米で登場,自宅内からの通信を定額に

2007/10/29 日経コミュニケーション

ついに世界初となるフェムトセルの商用サービスが始まった。手掛けるのは,米国シェア3位の携帯電話事業者であるスプリント。フェムトセル基地局を設置した宅内から発信した場合の通話料を無料にする。米国では,シェア4位のT-モバイルUSAが,無線LANと携帯電話のデュアル端末を利用して同種のサービスを提供中。スプリントの決断は,シェア上位の2事業者にも影響を与えそうだ。

(日経コミュニケーション)

 米スプリントは2007年9月19日,世界初となるフェムトセルを使ったFMC(固定・携帯融合)サービス「AIRAVE」を開始した。自宅内に超小型の携帯電話基地局を設置することで,自宅からの音声通話を定額にするサービスだ(米スプリントのサービス紹介ページ)。

 フェムトセルは,宅内利用を想定した超小型携帯電話基地局で,宅内のブロードバンド回線に接続する。これを利用することで,IP網経由で携帯電話ネットワークに接続可能となる。2007年以降,製品がいくつかのメーカーから発表されて通信業界の注目を集めてきた。

 注目された理由は,ユーザーの間近に専用の基地局を設置することで,通信品質の向上や料金の低廉化が期待できることにある。通信事業者の立場では,通信事業者がバックボーン回線のアクセス部分にかかる負荷を軽減できるとともに,基地局増強コストを低減できる。こうした効率化が,ユーザー料金の引き下げにつながると期待されている。

 日本でもソフトバンクが実証実験を進めているほか,NTTドコモが2007年秋にも業務用として商用化するなど,実用に向けた動きが活発化している。スプリントのサービス動向は,フェムトセルの今後を占う試金石となりそうだ。

音声プランのオプションで提供,月額料金は15ドルから

写真1●スプリントの「AIRAVE」で利用するフェムトセル基地局
写真1●スプリントの「AIRAVE」で利用するフェムトセル基地局

 AIRAVEサービスは現在,自宅の電波状態が悪いユーザーを主なターゲットとして,コロラド州デンバーとインディアナ州インディアナポリスの一部地域限定でサービスを提供中。2007年末までにはテネシー州ナッシュビルに拡大し,2008年には全国展開する予定である。サービス利用料金は,個人利用(1端末)で月額15ドル(約1800円),家族利用(3端末まで)で月額30ドル(約3500円)である。ただし利用には,これに加えてスプリントの正規の音声プランに加入する必要がある。

 このサービスでは,韓国サムスン電子製のフェムトセル・システム「CDMA Ubicell」を採用している。ユーザーが利用する際には,写真1にある専用の超小型基地局をユーザー宅のDSLまたはCATVブロードバンド回線に接続する。フェムトセル基地局は,IP網を通じてスプリントによる携帯電話サービスのコア・ネットワークと接続。自宅内でスプリントの携帯電話を使用可能にする。フェムトセル基地局には,CDMA2000 1x方式に対応した携帯電話端末を最大3台接続できる。

 サービス可能なエリアはスプリントが携帯電話の免許を所有する地域に限られることから,フェムトセル基地局の利用はGPSを使って制限している。そのため,米国外のブロードバンド回線にフェムトセル基地局を接続しても,携帯電話は利用できない。フェムトセル基地局は,スプリントが49.99ドル(約5900円)で販売している。

無線LANデュアルとフェムトセルは一長一短

写真2●T-モバイルの「ホットスポット@ホーム」で利用する端末「Nokia6086」と無線LANアクセス・ポイント
写真2●T-モバイルの「ホットスポット@ホーム」で利用する端末「Nokia6086」と無線LANアクセス・ポイント

 米国におけるFMCサービスでは,T-モバイルUSA(以下,T-モバイル)が2007年6月に全国展開した「ホットスポット@ホーム」が先行している(米T-モバイルUSAのサービス紹介ページ)。このサービスは,携帯電話(GSM)と無線LANのデュアルモード携帯電話を利用する。自宅に設置した専用アクセス・ポイント(AP)やT-モバイルが全米で展開している約8500カ所の公衆無線LANサービスと接続した場合,携帯電話の利用が時間無制限で定額になる。

 スプリントとT-モバイルのサービスは,自宅での通話が定額になるという点では同様だが,いくつかの点で異なる(表1)。まず,ホットスポット@ホームを利用するためには,無線LANに対応したデュアル端末を購入する必要がある。一方,AIRAVEの場合,ユーザーがすでに利用している携帯電話機をそのまま利用することができる。現状では,ホットスポット@ホームに対応したデュアル端末は2機種と少ない。既存の端末が利用可能な点で,スプリントのフェムトセル方式の方が利用しやすいといえる。


表1●AIRAVEとホットスポット@ホームの比較
サービス名 AIRAVE ホットスポット@ホーム
提供事業者 スプリント T-モバイルUSA
サービス開始 2007年9月(デンバーとインディアナポリスの地域限定サービス開始) 2006年10月(シアトルでの地域限定サービス開始)
2007年6月(全国展開)
月額料金 個人 月額15ドル(約1800円) 月額19.99ドル(約2400円)
家族/端末数 月額30ドル(約3500円)/3端末 月額29.99ドル(約3500円)/5端末
端末 CDMA対応の既存端末 Wi-Fiデュアルモード端末(Nokia6086またはSamsung t409)
初期費用 フェムトセル価格:49.99ドル(約5900円) 携帯電話機と無線LAN AP:2年契約で49.99ドル(約5900円)
宅内基地局のカバー範囲 21m 40~140m
モビリティ 宅内の利用に限られる T-モバイルのホットスポットでも利用可能
定額通話の相手先 最大50件 制限なし

 しかし,モビリティに関しては,ホットスポット@ホームが大きなアドバンテージを持つ。同サービスでは,屋外で発信して通信しながら自宅内に移動した場合,携帯電話ネットワークから無線LANネットワークにシームレスにハンドオーバーできる。また,自宅以外の場所でも,T-モバイルの公衆無線LANサービスならば自宅に居る場合と同条件で発信できる。さらに,通信しながら移動して公衆無線LANサービスから携帯電話ネットワークにハンドオーバーしても,無線LAN経由で発信した場合の料金が適用される。

 他方,AIRAVEでは,自宅外からの発信は携帯電話経由に限られている。自宅外で発信して宅内に移動しても,フェムトセル基地局へ自動的に切り替わるハンドオーバー機能はない。したがって自宅外から発信した場合は,携帯電話ネットワークの料金がそのまま適用される。帰宅後にAIRAVEの定額通話サービスを活用したいユーザーは,自宅から再度掛け直す必要がある。こうしたことから,AIRAVEはあくまでも宅内での利用を前提にしたサービスであるといえる。

 また,AIRAVEは定額通話できる相手の数が制限されているのに対し,ホットスポット@ホームに制限はない。さらに,ホットスポット@ホームのAPの仕様は,5端末まで接続可能で,APのカバー範囲も半径40~140メートルとかなり広い。これに対してAIRAVEの超小型基地局は,最大接続数は3端末まででカバー範囲も半径21メートルと狭い。

 AIRAVEはフェムトセルを利用した世界初の商用サービスであり,技術やサービスに多くの課題を残しているが,世界中のキャリアの注目が集まるところであろう。さらに,米国の通信市場を活気づかせる期待も持たれている。携帯電話最大手のAT&Tや2番手のベライゾンは,これまで固定通信サービスとのカニバリゼーション(共食い)を懸念してFMCに消極的であった。4位のT-モバイルに続いて3位のスプリントがFMCサービスに本格参入したことは,上位2社にも少なからぬ影響を与えるものと思われる。

武田 まゆみ(たけだ まゆみ) 情報通信総合研究所 研究員
情報系システムの設計・構築業務を経て,1992年より情報通信総合研究所。固定/無線のIPネットワークや携帯ネットワーク上のICTソリューションに関し,広く調査研究を行っている。著書は「情報通信アウトルック2007」(情報通信総合研究所編,共著)など。


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