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郵政民営化、IT部門が乗り越えた5つの試練

試練2:2万2000台の郵便局、サーバーを管理できない

大和田 尚孝,今井 俊之=日経コンピュータ 2007/10/25 日経コンピュータ
出典:日経コンピュータ 2007年9月17日号47ページより
(記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります)
目次一覧

 「こんなにサーバーをばらまいて、ちゃんと管理できるのでしょうか」ーー。05年末、霞が関にある郵政公社本社。あるメンバーの指摘に、会議室は一瞬凍り付いた。議論の対象は07年10月の稼働を目指して全面再構築中の郵便システム。発言者は、トヨタ自動車の実質的なCIOである天野吉和常務役員(現・常勤監査役)だった。

 郵政公社は、システムの専門家の立場から、民営・分社化対応について客観的な意見を聞く「情報システム アドバイザリーグループ」を05年10月に設けている。天野氏は、このメンバーとして、3カ月に1度の会議に参加しているのだ(表1)。

表1●「情報システム アドバイザリーグループ」のメンバー
日本郵政公社の民営・分社化対応プロジェクトについて、システムの専門家の立場から客観的な意見を伝える役割を担う
表1●「情報システム アドバイザリーグループ」のメンバー

 天野氏が問題視したのは、全国の郵便局に配置する「局サーバー」だ。NEC製PCサーバー「Express5800」で動作し、3種類のデータベースを搭載する。具体的にはOracleと日立製作所の「HiRDB」、アイエニウェア・ソリューションズの「SQL Anywhere」である。それぞれのデータベースが、窓口端末から受け付けた処理をこなし、レプリケーション機能などを利用してデータセンターのサーバーと同期を取る設計だった。

 これだけの処理を受け持つ局サーバーが、ほぼ全国の郵便局に1台ずつ、合計2万2000台近くあるのだ。コンビニエンス・ストア最大手セブン-イレブンの店舗サーバーの1.8倍である。すべての郵便局に、システムに詳しい職員がいるとは限らない。万が一、局サーバーがストップすると、長時間業務が止まる恐れがあった。

 一方で、郵政公社には全国2万4000局をオンラインでつなぐ「郵政総合情報通信ネットワーク(PNET)」がある。「貯金システムでも使っている信頼性の高いネットワークがあるのだから、それを生かさない手はない。運用面を考えると、拠点分散型でなくセンター集中型にすべきではないか」。天野氏は、こう考えたのだ。

IT部門のチーム編成に問題

 郵便システムのアーキテクチャが問題を抱えた根本的な理由は、IT部門のチーム編成にあった。

 郵政公社は07年10月の民営・分社化に合わせて、郵便システムを全面刷新する。ヤマト運輸など民間の物流事業者との競争に備えるためだ。民営・分社化により企業競争にさらされる前に、郵便システムを強化するのが至上命題だった。

 強化機能は3つある。1つは書留や小包などの配達状況をリアルタイムに近い形で一元管理すること。「追跡系」システムの構築だ。もう1つは、「決済系」システムによる決済業務の効率化。最後の1つは、収益分析など「経営系」システムの整備である。総投資額は380億円超だ。

 これら3系統のシステムの開発チームが「縦割りで別々に分かれていた」(プロジェクト関係者)。担当者間の情報交換も十分ではなかった。

 担当チームは、それぞれ開発案件を公開入札にかけ、プロジェクトを進めた。その結果、追跡系サーバーの構築はNEC。決済系システムの開発は日立製作所。経営系システムの開発は富士通。局サーバーの納入はNECに決まる。携帯端末は寺岡精工、窓口端末は東芝テックが落札した。マルチベンダー方式になったことで、郵便局のシステム運用体制まで考えたアーキテクチャの設計が難しくなった。

日立の古川社長に直接支援を要請

 設計方式について天野氏から指摘を受けた数カ月後の06年春、局サーバーの運用問題が顕在化する。

 実は、郵便担当のIT部員は、天野氏から助言を受けても郵便システムのアーキテクチャを見直さなかった。PNETは信頼性に問題があるのでセンター集中側にすべきではないと考えていたのだ。PNETの担当は「コーポレートIT部門」。郵便のIT部門とは別組織だ。ここにも、IT部門の縦割りによる弊害があった。

 事態の収拾に動いたのは、06年4月に郵政公社の管理系システムの責任者に就任した元みずほ銀行常務の吉本理事だった。着任後すぐに郵便システムの状況を知り、日立の古川一夫社長のところに駆け込んで、全面支援を要請したのだ。06年6月のことである。吉本理事と古川社長は高校の同期生。日立は決済系システムの開発を担当するなど責任の一端があっただけに古川社長もすぐに了解した。

 最終的に、局サーバーの機能をデータセンター側で実装するサーバー集中型にアーキテクチャを変更。局サーバーの役割はゲートウェイ機能に絞り込んだ(図1)。日立は同社製の大型UNIXサーバーをデータセンターに増設し、十分な処理性能を確保。日立が投入した技術者はピーク時で700人に達した。

図1●日本郵政公社が構築中の「次世代郵便システム」の概要
図1●日本郵政公社が構築中の「次世代郵便システム」の概要
日立製作所、NEC、富士通などに分割発注するマルチベンダー方式を採用したことから、システム構成が複雑になり開発は難航した

 設計方針を変更した影響により、郵便システムの開発は最後まで難航した。郵政公社は暫定対応の対象となる63システムすべてについて、完成期限を7月末に設定していた。だがそこでは終わらず、7~8月の週末に実施した業務リハーサルにも一部影響が出た。それでも、吉本理事などがIT部門の縦割り組織の融合を推進したため、何とか間に合わせることができた。

 ただし、稼働後に不具合が発生する可能性は十分にあり得る。郵政公社は万が一に備えて、システムが停止しても手作業で業務を滞りなくこなせるように、非常時のマニュアル整備に力を入れている。

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