第2回 変幻自在で他人のパソコンを勝手に操る,ボットの恐るべき正体とは?
出典:日経パソコン 2006年8月14日号
(記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります) ボットはネットワーク経由で外部からの指令を受け、攻撃者にリモートで操作される不正プログラムだ。厳密な定義はまだないのだが、感染の手口や形態から見ると、「ワーム」と「トロイの木馬」の特徴を兼ね備えている(図1)。
例えば、OSなどのセキュリティホールやファイル共有機能などを悪用してネットワークからパソコンに侵入し、自分自身を複製して感染の拡大を図る点ではワームと同じ。トロイの木馬のように、ユーザーに電子メールの添付ファイルやWebサイト上の悪質なファイルをクリックさせて感染することもある。感染すると、狭義のウイルス*と違ってほかのファイルには寄生せず、独立したプログラムとして活動する。 個人情報を盗んで外部に送信するのは「スパイウエア」、キーボードの操作履歴を取得するのは「キーロガー」と呼ぶように、機能で不正プログラムを分類する方法もある。 しかし、ボットは従来の不正プログラムの備える機能を幅広く網羅しており、時に「最初は機能が少なくても、後から追加で機能をダウンロードする」(トレンドマイクロサポートサービス本部アンチ・ウイルスセンターシニアアンチウイルスサポートエンジニア岡本勝之氏)。そのため、機能による定義付けは難しい(図2)。
パソコンがボットに感染すると、攻撃者がリモート操作用に準備した中継サーバーに接続する。攻撃者はチャットシステムや独自の通信手段などを利用して、感染したパソコンに指令。リモート操作が可能となった多数の感染パソコンが、ボットネットとなってインターネットへの攻撃を展開する(図3)。
挙動はかなり静かこれだけ大規模に活動すれば、ユーザーに気付かれそうなものだが、実際のボットの挙動はひそやか。今までの不正プログラムのようにデータを消したり、Windowsの再起動を繰り返したりする派手な例は少ない(図4)。その狙いは、金銭を得るための犯罪に使えるインフラの維持にある。気付かれてしまうと、ボットが駆除されて、インフラを維持できなくなってしまうわけだ。
同じ理由から、ボットはウイルス対策ソフトに検出されにくいように作られている。ボットには非常に多くの亜種があり、対策ソフトのパターンファイル(定義ファイル)作成が間に合わないことがあるのだ。 パターンファイルは、不正プログラムのいわば“指名手配書”で、収集したサンプルを分析して作成する。対策ソフトはこの“手配書”を基に不正プログラムを検出する。Telecom-ISAC Japanなどが実施した実験では、ボットのうち数%が最新(当時)のパターンファイルでも検出できなかった(図5)。
これほど亜種が多いのは、ボットを簡単に変質させるパッカーと呼ばれる専用ツールがインターネット上に出回っているためだ(図6)。
次章からは実験時の画像を交えて、ボットの驚くべき多機能ぶりを具体的に見ていこう。 連載新着連載目次へ >>
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