福岡県の地上波民放事業者4社(RKB毎日放送と九州朝日放送,テレビ西日本,福岡放送)は2007年10月12日,ケーブルテレビ(CATV)事業者による区域外再送信の同意をめぐる大臣裁定(2007年8月22日付通知)に対して,異議申立てを行った。福岡民放4社は区域外再送信の同意の撤回と,大臣裁定制度の撤廃を含む見直しを求める意向である。

 8月の大臣裁定は, 2007年3月23日に大分県のCATV事業者4社(大分ケーブルテレコムとシーティービーメディア,ケーブルテレビ佐伯,大分ケーブルネットワーク)からの申請に対するものである。今回福岡民放4社は,最初の大臣裁定の際に情報通信審議会(情通審)が再送信を拒否できない理由として挙げた内容に個々に反論する形で,異議申立てを行った。

 福岡民放4社は一貫して「地域免許制度の形がい化」「著作権処理が不十分」「大分地元民放局の経営面での影響が大きい」などの点を問題視しており,大臣裁定の際にそのベースとなった情通審の答申で「再送信を拒否する根拠とならない」と判断された時の主張をあえて変えずに,今回の異議申立てを行っている。

 前回審議を行った情通審は有線テレビジョン放送法(有テレ法)や電気通信事業法などに属している事項を調査審議の対象としている。一方,今回の異議申立てを審理する電波監理審議会(電監審)は,電波法や放送法,有テレ法などに基づいた処分に対する不服申立てについて審査を行う機関である。電監審が放送法を含む幅広い観点から検討を行うことで,「番組がカットして放送されないこと」などといったハードルの低い5つの条件が再送信の大臣裁定の判断基準となっている現状について,「見直しに踏み込んでもらえるという確信にも似た期待をしている」(異議申立てを行った1社)という。

 CATV事業者による民放番組の区域外再送信をめぐっては,民放事業者とCATV事業者の調整が難航する例が増えている。6月13日には長野県のCATV事業者2社から区域外再送信についての大臣裁定を求める申請が行われており,現在審議中である。こうしたCATV事業者側の動きに対して,日本民間放送連盟(民放連)は,再送信における大臣裁定制度の現状を「放送事業者に対して著しく不利な“非対称規制”」であるとし,見直しを求める意見書を総務大臣に提出するなど,両者の溝は深まりつつある。

 8月の大臣裁定の根拠となった情通審の答申ではCATV事業者側の主張を支持する一方で,再送信制度のあり方について今後の状況の変化を見据えた幅広い検証が必要という趣旨の指摘が盛り込まれた。この指摘を受けて,総務省では10月5日より「有線放送による放送の再送信に関する研究会」を開催し,2008年3月頃を目途に結論を出す方向で作業中で,今後の動向が注目される。