概要 　
Windowsのnetコマンドに似た多機能なコマンド。さまざまなサブコマンドを持ち，Windowsホストに関する状態表示や，リモート・ホストの管理，あるいはWindowsドメインとの連携やSambaサーバーの管理といった作業に利用できる。netコマンドにはさまざまなサブコマンドが用意されており，サブコマンドの実行に当たり基本オプションについても設定できる。ここでは，サブコマンドのうち主にリモート管理に使うnet user，net password，net group，net groupmember，net share，net file，net printq，net printer，net service，net shutdown，net abortshutdownサブコマンドと，そのオプションを中心に説明する。

　構文 　
net [ads|rap|rpc] [-w NetBIOS名 | --workgroup=NetBIOS名] [-W NetBIOS名 | --myworkgroup=NetBIOS名] [-U ユーザー名[%パスワード] | --user=ユーザー名[%パスワード]] [-I IPアドレス | --ipaddress=IPアドレス] [-p ポート番号 | --port=ポート番号] [-n NetBIOS名 | --myname=NetBIOS名] [-s SMB設定ファイル名 | --configfile=SMB設定ファイル名] [-S NetBIOS名 | --server=NetBIOS名] [-l | --long] [-P | --machine-pass] [-d デバッグ・レベル | --debuglevel=デバッグ・レベル]
または
net [-V | --version]
または
net [-h | --help}

　利用環境 　
Red Hat Enterprise Linux 3　○（samba-client 3.0.9-1.3E.12で確認）

　netコマンドの基本オプション　
ads|rap|rpc接続に使うプロトコルを指定する。adsは「Active Directory」を意味しておりKerberos認証での接続を試みる。rapは「remote administration protocol」を指し，Windows 9x系およびWindows NT 3.x系で使っている認証方式で接続する。rpcは「MS-RPC」を意味しており，Windows NTと互換性のある接続を試みる。このオプションを指定しなかった場合，netコマンドはプロトコルを自動判別して接続を試みる。
-w NetBIOS名 | --workgroup=NetBIOS名操作の対象とするワークグループ名またはドメインを指定する。このオプションもしくは以下で説明する-Sまたは-Iオプションを用い，サーバー名かIPアドレスで操作対象を指定する
-W NetBIOS名 | --myworkgroup=NetBIOS名自分自身のワークグループ名もしくはドメイン名を指定する。このオプションを使って指定した内容はデフォルト設定を書いたsmb.confファイルでの設定内容よりも優先される。
-U ユーザー名[%パスワード] | --user=ユーザー名[%パスワード]リモート・ホストの接続に使うユーザー名およびパスワードを指定する。パスワードを指定しない場合は「Password:」のプロンプトが表示され入力が求められる。このオプションを指定しない場合は，「USER」と「LOGNAME」という環境変数を順番に調べてユーザー名として指定する。環境変数が見つからない場合はユーザー名として「GUEST」を用いる
-I IPアドレス | --ipaddress=IPアドレス接続先サーバーをIPアドレスで指定する。-SオプションでNetBIOS名を指定した場合は名前解決して得られたIPアドレスをあて先として使って接続する。
-p ポート番号 | --port=ポート番号サーバーに接続するときのあて先ポート番号を既定から変更する。既定ではTCPの445番ポートを試行してから，次に139番ポートで接続を試みる。
-n NetBIOS名 | --myname=NetBIOS名自分自身のNetBIOS名を指定する。このオプションでの指定はデフォルト設定を書いたsmb.confファイルでの設定内容よりも優先される。
-s SMB設定ファイル名 | --configfile=SMB設定ファイル名サーバーの提供するサービスなどの関連情報を含む，設定ファイルを指定する。
-S NetBIOS名 | --server=NetBIOS名操作の対象とするサーバーをワークグループまたはドメインを設定する。このオプションもしくは上記の-wまたは-Iオプションを使ってサーバーのNetBIOS名もしくはIPアドレスで操作対象を指定する。
-l | --long各項目に関する詳細な情報を表示する。
-P | --machine-passローカル・ホストのコンピュータ・アカウントを用いて，別のサーバーに対して問い合わせをする。
-d デバッグ・レベル | --debuglevel=デバッグ・レベルサーバー動作に関する情報をログ・ファイルに出力する，出力する情報の種類は，デバッグ・レベルとして0～10の整数で指定する。通常は既定値の「0」(致命的なエラーと重大な警告のみ)か「1」(0の内容に加え稼働状況も記録)に設定する。「3」より上のレベルは開発者が使うデバッグ・レベルである。このパラメータで指定した設定はデフォルト設定を書いたsmb.confファイルでの設定内容よりも優先される。
-V | --versionバージョン情報を表示する。
-h | --helpコマンドの使用方法を表示する。


　net userサブコマンド 　

概要：
基本オプションで指定した接続先サーバーあるいはWindowsドメイン（Active Directory）上にあるユーザーの一覧などを表示したり，ユーザーの追加あるいは削除をしたりすることができる。オプションを指定しない場合は，単に対象サーバー上のユーザー一覧を表示する。

構文：
net user [delete ユーザー名 [-c コンテナもしくはOU | --container=コンテナもしくはOU]] [info ユーザー名] [add ユーザー名 [パスワード] [-c コンテナもしくはOU | --container=コンテナもしくはOU] [-C 表示名または説明 | --comment=表示名または説明] [-F ユーザー・フラグ]] [rename 変更前ユーザー名 変更後ユーザー名]

オプション：
delete ユーザー名　指定したユーザーを削除する。基本オプションでプロトコルとしてadsを指定してActive Directoryドメイン上にあるUserコンテナ以外に所属するユーザーを削除する場合は，-cオプションで対象とするコンテナないしはOUを指定する必要がある。
info ユーザー名　指定したユーザーの所属グループを表示する。
add ユーザー名 [パスワード] [-c コンテナもしくはOU | --container=コンテナもしくはOU] [-C 表示名または説明 | --comment=表示名または説明] [-F ユーザー・フラグ]　指定したパラメータでユーザーを追加する。基本オプションで指定する接続プロトコルによって指定できるオプションが異なる。adsでは「パスワード」と，-cオプションで「コンテナ」あるいは「OU」を，-Cオプションで「表示名」を指定できる。rapでは-Cオプションで「説明の内容」と，-Fオプションで「フラグ値」（ADSIのuserAccountControl属性）を指定することができる。rpcではオプションは一切指定できず，「ユーザーは次回ログオン時にパスワード変更が必要」「アカウントは無効」のチェックが有効な状態でユーザーが作成される。
rename 変更前ユーザー名 変更後ユーザー名　指定したユーザーの名前を新しいものに変更する。


　net passwordサブコマンド 　

概要：
指定したユーザーのパスワードを変更する。基本的に接続プロトコルとしてrapを指定して実行する。rpcプロトコルを指定した場合でもパスワードの変更は可能だが，対象ユーザーは「ユーザーは次回ログオン時にパスワード変更か必要」のチェックが有効な状態となる。

構文：
net password ユーザー名 変更前パスワード 変更後パスワード


　net groupサブコマンド 　

概要：
基本オプションで指定した接続先サーバー，あるいはWindowsドメイン（Active Directory）上にあるグループの一覧などを表示したり，グループの作成あるいは削除を実行したりできる。オプションを指定しない場合は，単に対象サーバー上のグループ一覧が表示される。接続プロトコルとしてrapを指定した場合，グローバル・グループのみが対象となる。

構文：
net group [list グループ種別] [delete グループ名 [-c コンテナもしくはOU | --container=コンテナもしくはOU]] [add グループ名 [パスワード] [-c コンテナもしくはOU | --container=コンテナもしくはOU] [-C 表示名または説明 | --comment=表示名または説明]] [members グループ名]

オプション：
list グループ種別　接続プロトコルとしてrpcを指定した場合のみ利用できるオプション。指定した種別のグループ一覧を表示する。指定できるグループ種別は，global，local，builtinの三つ。localを指定するとローカル・グループ（ビルトインを除く）が，globalを指定するとグローバル・グループが，builtinを指定するとビルトイン・グループが，それぞれ表示される。
delete グループ名 [-c コンテナもしくはOU | --container=コンテナもしくはOU]　指定したグループを削除する。接続プロトコルとしてrapを指定した場合は実行できない。
add グループ名 [パスワード] [-c コンテナもしくはOU | --container=コンテナもしくはOU] [-C 表示名または説明 | --comment=表示名または説明]　新規にグループを作成する。接続プロトコルとしてadsを使うと，作成先のコンテナあるいはOUを指定することができる。接続プロトコルとしてrapを指定した場合は実行できない。
members グループ名　接続プロトコルとしてrpcを使った場合のみ指定できるオプション。指定した名前のグループに所属するユーザーの一覧を表示する。

　net groupmemberサブコマンド 　

概要：
指定したグループのメンバー一覧を表示したり，グループ・メンバーの追加や削除をしたりすることができる。接続プロトコルとしてrapを指定した場合のみ使用可能。

構文：
net groupmember list グループ名
または
net groupmember delete グループ名 ユーザー名
または
net groupmember add グループ名 ユーザー名

オプション：
list グループ名　指定したグループのメンバーを一覧表示する。
delete グループ名 ユーザー名　指定したユーザーを，グループ・メンバーから削除する。
add グループ名 ユーザー名　指定したユーザーをグループのメンバーとして追加する。