競合するGoogleやYahoo!などのオンライン企業が業界内で確固たる地位を築き,さらにもっと重要なことに,おそらくは次世代のIT意思決定担当者の心をつかんでいる現状を見れば,Microsoftが重い腰を上げてクラウド・コンピューティングに乗り出すのは時間の問題と思われる。Microsoftは先に,個人ユーザーや小規模企業向けに「Windows Live」が提供してきた機能を大企業向けに提供する新戦略,「Microsoft Online」を発表した。これによって,Microsoftはクラウド・コンピューティングに向けた最初の重要な1歩(小さな1歩かもしれないが)を踏み出したことになる。

 奇妙なことに,現時点でこの新戦略について明らかにされているのは,これでほとんど全部である。Microsoftが提供する様々なLiveサービスについてはすでに知っている読者もいるかもしれない。Windows Liveは,Windowsの価値を高めることを目的として提供される製品とサービスの集合体だ。Xbox Liveは,Xbox 360のユーザーがオンラインゲームで戦ったり,一緒に遊べるようにする以外に,ダウンロード可能なテレビ番組や映画を提供する。

 そしてOffice Liveは,Microsoftが狙っているマーケットをより明確に示すために,その名前がOffice Live Small Businessに変更された。Office Live Small Businessは,個人ユーザーや小規模企業がWebサイトの作成,電子メールの受信,および消費者へのマーケティングを無料または低コストで行うための手段を提供する。

 Microsoftはさらに,Office Live Small Businessに新サービスOffice Live Workspaceのベータ版を追加した。これは,Microsoftのデスクトップベースのオフィス生産性スイートのユーザーに,オンライン・ストレージ領域とコラボレーション環境を提供するサービスである。Office Live Workspaceは無料であり,Microsoftの「ソフトウエア+サービス」戦略の好例になるだろう。ただし,確かにオンライン・サービスではあるが,Microsoft Officeの作業コピーがないと,ほとんど使い物にはならない。

 Microsoftは,そのオンライン・サービスを二つの戦略に分割し,それぞれ狙っているマーケットを明らかにすることによって,業界に非常に明確なメッセージを送っている。すなわち,Microsoftは「ソフトウエア+サービス」戦略をいよいよ本格的に推し進めるということ,そしてすでに先日発表したように,この新しいタイプの製品を企業ユーザー向けに提供する予定であるということである。

 Microsoft Onlineという名前以外に,このブランドでMicrosoftがMicrosoft Exchange Online,Microsoft Office SharePoint Online,Microsoft Office Communications Onlineの三つのサービスの提供を計画していることが明らかにされている。筆者が思うに,この三つのサービスは,Microsoftがすでに製品化しているか,または現在製品化しようとしている製品のブランドを,単に付け替えただけだろう。例えば,Microsoft Exchange OnlineはおそらくExchange Hosted Servicesのブランドを変更したサービスだ。

 Microsoftは,公式にはそのOnlineサービスには企業データ,ユーザー・アカウント,またはビジネス・ポリシーやコンプライアンス・ポリシーのホスティングが含まれるとしか発表していないが,これは数年前に「Hailstorm」という実現できそうもないビジョンを発表したときと同じだ。

 これらのOnlineサービスは,筆者が入手した情報から判断して,Microsoftサーバーテクノロジを実装するための新しい手段の一つだと思われる。したがって,ユーザーは,社内ホスティングおよびMicrosoftパートナーとの連携によってオンサイト実装を提供する方法以外に,Microsoftのデータセンターを使用してMicrosoftサーバーをホストする方法を選択できるようになる。

 これは,従来型企業にとって魅力的な選択肢だろうか。最初のうちは興味を示さないだろう。また,一部のアプリケーションには全く適していない。しかし昨今,環境がますます複雑になるにつれて,巨大企業も少なくとも詳しい内容を知りたいとは思うだろう。この件については,また新しい情報が入りしだい報告する予定だ。