三井住友海上火災保険のCIOである市原等・取締役常務執行役員 |
この2年余り、保険業界では嵐が吹き荒れた。多くの企業が支払い漏れなどの指摘を受けて信頼回復に全力で取り組んでいる。三井住友海上火災保険もそのうちの1社。同社でCIO(最高情報責任者)として業務改善をリードしているのが市原等取締役常務執行役員だ。「すべての業務プロセスをこれからの2年で見直したい」と話す。
例えば10月24日から、自動車保険の契約で紙と印鑑を不要にした「電子計上システム」を運用する。「業務プロセス見直しのすべてにIT(情報技術)はからんでくるだろう。判定、販売、商品開発などあらゆる場面でシステムが活躍すると思う。お客様の視点に立ってシステムを構築したい」(市原取締役)。
市原取締役はIT推進部のほか、人事部、総務部、不動産部、業務監査部、営業事務部も担当している。多忙を極めるが、兼任するメリットもあるという。「システム部門の人間も現場を良く知る必要がある。1週間だけ営業を経験できる『社内トレーニー』制度を活用していく」。社内トレーニー制度は市原取締役が人事部長時代に作ったものだ。人事部門担当を兼任するCIOだからこそ、こうした人材育成施策を活発に推進できる。
同社では、業務システムごとにユーザー部門の部長クラスが「システムオーナー」を務める。ユーザー部門は自分の職場で使うシステムについての理解を深め、責任を持つべきという考えに基づく。その逆は社内トレーニー制度で補う。「現場の社員のシステムに対する理解はかなり進んでいる。役員に対しても、経営会議の場ですべてのシステム構築の進ちょく状況の説明をしている」と市原取締役が話すように、全社的にITを使いこなそうという意識は高い。今後2年間での変革に注目が集まりそうだ。
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