環境問題への関心が高まっている。企業のオフィスにおいても,ゴミの分別はもちろん,空調の温度設定を28度に上げたり,昼休みに照明を消したりといった取り組みも珍しくなくなってきた。

 だた,意外にも野放しなのがパソコンである。退社時に電源を切るのは省エネの観点からみれば当然としても,離席時や長時間の打ち合わせの時はどうだろうか。インターネットから入手したお気に入りのスクリーンセーバーを動かしたり,家族の写真を表示させたりしていないだろうか。

 環境問題対策の観点からすると,このようなスクリーンセーバーの使い方は好ましくないのは明らかだ。業務上有効であるわけでもない映像や動画を,席に誰も座っていないにもかかわらず再生し,電力を消費している。

 省エネや環境対策を進めたいと考えるのであれば,スクリーンセーバーの利用は,今すぐやめるべきではないだろうか。

「電源オプション」を使おう

 もちろん,スクリーンセーバーにもいくつかの効果があるのは確かだ。その一つはセキュリティだろう。スクリーンセーバーを有効にして,画面をロックさせることを従業員に求めている企業は多い。席を離れている間に他人にパソコンを操作されたり,機密データを盗まれたりすることを防止する狙いである。

 単純にちょっとした息抜きにスクリーンセーバーを眺める,といった人もいるだろう。確かにその気持ちは共感できる。当の筆者も,インターネットからさまざまなスクリーンセーバーをダウンロードして,仕事の息抜きに動かしてみるのが楽しみだった。

 しかし筆者はスクリーンセーバーを使うのをやめた。なぜなら,環境問題に少し関心が出てきたから。そしてもう一つ,スクリーンセーバーを使わなくても,離籍時のセキュリティ対策は可能だから,である。それは「電源オプション」を使うことだ。

 電源オプションは,Windows OSに搭載されている機能で,「コントロールパネル」を開くと見つかる。ノート・パソコンを利用しているユーザーであれば,何度か使った経験があるかもしれない。しかしデスクトップ・パソコンでこの機能を有効に活用しているユーザーは,少数派だ。

省電力とセキュリティを両立

 電源オプションは,その名の通り,電源周りの各種設定をするための機能である。画面を開くと,モニターとの接続を切るまでの時間や,スタンバイ状態に移行するまでの時間などを設定できる。これを適切に設定すれば,スクリーンセーバーは必要ない。

 筆者がどのように設定しているかというと,モニターの電源は「1分後」に切る。これで,キーボードやマウスを操作していないと1分後に画面がブランクに変わる。操作を始めるとすぐに画面が映し出される。

 また,システム スタンバイ状態に移行するのは「5分後」である。5分たつと,パソコンは使用中のデータをメモリーに保存したまま消費電力を小さくする。この時,電源オプションの詳細設定で,スタンバイから通常状態に移行するときにパスワードを入力するように設定しておくと,スクリーンセーバーと同様のセキュリティ機能を実現できる。つまり省電力とセキュリティを両立することができるわけだ。さらに休止状態では,使用中のデータをハードディスクに保存し,もっと電力を小さくすることができる。

 Widows Vistaは,電源オプションを使った省電力機能をさらに強化している。ハードディスクやUSBデバイス,ディスプレイなど,電源を利用する部品ごとに電源オン・オフを細かく設定できるようになっている。

対岸の火事ではない環境対策

 ただ,使用しているハードウエアによっては,スタンバイ状態にうまく移行できなかったり,復旧時にエラーが発生したりということもある。実際に何度かテストしてから利用するべきかもしれない。

 1台のパソコンが使う電力を,そこまで細かく節約しなくてもよいのではないか,と考える読者も少なくないだろう。しかし,企業によっては数万台のパソコンを運用していることを考えれば,ちりも積もれば何とやらである。

 10月17日に環境省と経済産業省が開催した,産業構造審議会と中央環境審議会の合同会合では,「コンビニエンスストア各社は,24時間営業をやめてエネルギー消費を減らすべきではないか」,「自動車業界はもっとCO2削減の努力を」といった企業に対する厳しい意見が相次いだ。日々の生活に影響を与えるところまで,環境問題は大きくなりつつある。

 今後は,さまざまな業種の企業にCO2削減が求められることになるだろう。環境に対する意識を変える意味でも,「電源オプション」のような些細なことから,対策を始めてみてはいかがだろうか。