写真5 改善活動を啓もうする掲示板
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 車載通信機器などを製造・販売するヨコオが、日本での成功体験をもとに中国でトヨタ流改善を始めたのは2006年。その中心人物である多胡 一男氏に、取り組みの詳細をほぼリアルタイムでメルマガに寄稿してもらった。1年前の話ではあるが、現地に改善活動を根づかせるためには何が課題となるのかなど、中国で改善に取り組もうとする企業にとっては大いに参考になるだろう(日経情報ストラテジー編集部)。

多胡 一男
東莞友華汽車配件有限公司(ヨコオの中国法人) OJT-Sプロジェクト 経理担当


 皆さん、こんにちは。中国からの5回目となります。
(原文は2006年11月1日付け日経情報ストラテジー・メール)

 前回はOJT-S(トヨタ生産方式に基づく職場改善・人材育成)活動のなかで、こだわりを持ち続けている「基準づくり」についてお話しましたが、今回はカイゼン活動の進ちょく状況と、中国工場である東莞友華汽車配件有限公司の現地の管理職に対して実施した中間報告会の様子をお話します。

■カイゼン活動

【1】5Sチェックのその後

 5Sチェックは毎月第1週に実施していますが、このところ「なかだるみ」で得点が伸びていません。5Sの言葉自体についてはかなり理解してもらえていますが、いざ行動となると、何をどうしたらいいのかが分からない人が多いようです。

 そこで、作業者に対して整理・整頓・しつけに絞って、自分の作業範囲プラス前後の作業台・床だけを範囲として、「作業に必要なもの以外は置かない、気がついたら片付ける」を合言葉に、改めて活動を推進中です。結果は次回でお知らせしますが、決め事をキチっと作り、内容が分かれば実行可能だと思っています。

【2】標準作業の定着

 モデルラインで進めていた標準作業の設定は、組み立ておよび前工程への設定が終了しました。設定したとはいえ、まだまだ作業者に定着しているわけではなく、設定した作業分担や時間通りに作業ができていないなどの課題も多く、安定するまでは根気よく指導とフォローが必要なようです。

 前回、部材供給・離席時対応の専任者について触れましたが、その効果はコンスタントに表れ、ライン可動率が安定してきています。現在、専任者を増やして全工程の半分強をカバーしています。しかし、ここでも問題がないわけではなく、専任者業務の標準確立を急がせています。

【3】工程内の基準づくり

 マイクロアンテナの生産ラインは、設置した時期によって設備や治具などが不ぞろいなものが多いため、統一仕様にすべくモデルづくりをしています。

 例えば、工程間の仕掛り置場ですが、定位置停止・定量流しを守らせる道具として、傷がつきにくく掃除がしやすい形へと統一中です。基本は5Sと連動しますが、作業台の上には必要なもの以外は置かないを基本にカイゼン中です。

【4】作業者教育

 このところ新機種が立ち上がっているため、OJT-S活動開始当初から40人ほど増加しました。離職補充と合わせると、新しい人が毎日1~2人加わっていることになります(実際にはまとめて入社しますが)。

 教育の方法は前回紹介しましたが、いきなり量産工程に就かせられないので現場内に教育専用の工程を設置しました。該当製品の加工・検査に必要な設備・治具とサンプルを置き、基本動作の習得と「ものづくり」の基本が見えるようにしていきたいと考えています。

■中間報告会

 先日、中国工場における管理職を対象に、OJT-S活動の中間報告会(資料説明と現場説明など)を開催し、モデル職場での活動を例にとって、OJT-Sの考え方や仕組みづくりの進め方について報告しました。

 赴任当初にもOJT-Sの基本的な考え方は説明しましたが、実際の活動状況を見聞きするのは初めての人がほとんどで、興味深く聞いてくれていました。資料の報告より現場説明の際に、質問が活発に出ていた気がします。社内の管理職が大勢工程見学に行きましたが、作業者があわてることなく普段と同じ状態で黙々と作業をしていたのには感心しました。

 従来とは違って基本づくりにこだわり、現場で説明をしているOJT-Sメンバーや管理者の姿を見ながら、「物づくり」「人づくり」「品質づくり」を柱に活動した成果が徐々に出てきているのかなぁ、と感じた一日でした。皆さん、普段は自らの職場の業務に追われ、ほかの職場を見る機会が少ないので、改善(標準化・見える化など)活動を進める上では参考になったようです。

 では、今回はこの辺で。


多胡 一男(たご かずお)
1981年、株式会社ヨコオ(車載通信機器・無線通信機器などの製造・販売)入社。2006年6月より同社中国工場である東莞友華汽車配件有限公司にてOJT-Sプロジェクト 経理担当。ヨコオでは、人事部門にて、人事システム革新テーマ等に取り組む。その後、車載通信機器生産部門責任者に就任。2004年には韓国での合弁会社の製造立ち上げ責任者として駐在。2005年からはOJT-Sプロジェクト(トヨタ生産方式に基づく職場改善・人材育成プロジェクト)に参画し、製造現場のものづくりシステム改善に取り組み、現在同社中国工場への展開で奮闘している。同社のWebサイトはこちら