アジア最大のICT関連展示会であるCOMPUTEX TAIPEI 2007は,ネットワーク機器の展示が目白押しだった。モバイルWiMAX関連機器が登場し,無線LAN機器はIEEE 802.11n準拠製品が主流となった。802.11nで40MHz幅を使える「ドラフト2.0」対応製品も多かった。

 2007年6月5日~9日,台湾・台北市でICT関連の展示会である「COMPUTEX TAIPEI 2007」が開催された(写真1)。COMPUTEXはマザーボードなどパソコン関連製品が数多く出展されている印象が強いが,通信関連機器の出展も相当数に上る。実際,台湾のメーカーに限っても166社の通信機器メーカーが集った。特に来場者の関心を集めたのが無線関連機器の展示。中でも,モバイルWiMAX関連機器とIEEE 802.11nドラフト2.0準拠製品に人だかりができていた。

写真1●台湾・台北市で開催されたCOMPUTEX TAIPEI 2007の会場の様子
写真1●台湾・台北市で開催されたCOMPUTEX TAIPEI 2007の会場の様子

 今回の展示傾向は,台湾メーカーが無線LAN機器製造で世界的に大きなシェアを占めていることと関係している。全世界の無線LAN機器の95%は台湾のメーカーが製造しているとの統計データがあり(台湾の工業研究院による数値),実際,日本で販売されているコンシューマ向け無線LAN機器は台湾メーカーのOEM製品がほとんどだ。

 そんな台湾メーカーが現在,無線LANに代わる成長分野として注目しているのがモバイルWiMAXである。その普及を政策と技術の両面で後押しする工業技術研究院・資訊與通訊(情報通信)研究所の林宝樹所長は,「WiMAXの市場予測は難しいが,遅くとも2010年までにはワールドワイドで1000万ユーザー規模の市場になると見ている。目標は,そのときに台湾メーカーがCPEなどの機器でシェア40%以上を獲得すること。いずれは無線LAN機器並みの高いシェアを得るようになりたい」という。

2.5GHz帯対応モバイルWiMAX製品が展示

 無線関連機器のOEMを手がける台湾ジェムテック・テクノロジーはモバイルWiMAX(IEEE 802.16e-2005)に準拠したPCカード型のデータ通信カード「WIXS-140」や,屋内設置用ルーター「WIXS-141」を展示した(図1)。MAC(メディア・アクセス制御)や物理層などの機能を集積したWiMAX対応の通信制御LSIには,仏シーカンス・コミュニケーションズ製チップを採用したという。

図1●モバイルWiMAX(IEEE 802.16e-2005)に対応する製品が登場
図1●モバイルWiMAX(IEEE 802.16e-2005)に対応する製品が登場
2.5GHz帯に対応するPCカード型データ通信カードも展示されていた。
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 モバイルWiMAXのプロファイル(実装仕様)はいくつかあるが,これらの製品は「3A」をサポートしている。3Aは,周波数帯として2.496G~2.69GHz,帯域幅は5MHz幅と10MHz幅を採用するプロファイルである。総務省が5月15日に公表した広帯域移動無線アクセスシステムの免許方針案における2.5GHz帯は,3Aプロファイルの周波数帯に該当する。説明員によると,展示製品は2007年末までにモバイルWiMAXによるデータ通信の試験サービスを始める米スプリント・ネクステルが採用するという。

 ジェムテックの製品とは異なるプロファイルの製品を展示していたのがスパークラン・コミュニケーションズ。モバイルWiMAX対応のCPEを展示した。出荷は2007年第4四半期を予定している。周波数は3.3G~3.5GHz,3.4G~3.6GHz,3.6G~3.8GHzおよび2.5G~2.7GHzで,周波数幅は3.5MHzと7MHzに対応する。そのほか,台湾サイバータン・テクノロジーや台湾5Vテクノロジーズが,WiMAX対応をうたう機器を展示した(写真2)。

  写真2●モバイルWiMAX対応をうたう無線LANルーターや接続装置
いずれの製品もOEM向けで,モバイルWiMAXの実装仕様(プロファイル)は組み合わせるカードなどに依存する。
台湾サイバータンが出展したモバイルWiMAX対応をうたう無線LANルーター   台湾5Vテクノロジーズが出展したWiMAX関連機器   台湾5Vテクノロジーズが出展したWiMAX関連機器
台湾サイバータンが出展したモバイルWiMAX対応をうたう無線LANルーター
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  台湾5Vテクノロジーズが出展したWiMAX関連機器
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40MHz幅の802.11nドラフト2.0が主流

 WiMAXを上回る規模で会場内の至る所で目に付いたのがIEEE 802.11n対応の無線LAN機器だ。特に新しいのは,802.11nドラフト2.0に準拠した製品。ドラフト2.0はチャネル幅として20MHzに加え,40MHzを使えるようにしたタイプだ。40MHzの帯域幅とMIMOと呼ぶ空間多重技術を使うことで,理論値で最大300Mビット/秒の伝送速度を実現する。日本では,電波法施行規則によって40MHz幅の無線LANシステムは使えなかったが,6月中に実施予定の省令改正で利用できるようになる。

 COMPUTEXの会場では,上述のジェムテックやサイバータン,さらに日本ではパソコンのマザーボード・メーカーとして知られる台湾アスーステック・コンピュータや台湾ギガバイト・テクノロジーなどが,IEEE 802.11nドラフト2.0に準拠する無線LANルーターを出展した。

 特にギガバイトの製品は,ドラフト2.0準拠の最新製品であるにもかかわらず,既に低価格路線を打ち出している。同社の無線LANルーター「GN-BR30N-RH」(写真3)は,市場価格が「80~90米ドル」(説明員)という。帯域幅は20MHzと40MHzの両方が利用可能だが,2.4GHz帯だけに対応する。主に米国やヨーロッパ市場で販売する。このGN-BR30N-RHのように安価な802.11n対応無線LAN機器への搭載が進んでいるのが台湾のラリンク・テクノロジー製チップである。「ローコストなので採用が増えている」(ジェムテックの説明員)という。

写真3●実売80~90米ドル程度のIEEE 802.11nドラフト2.0対応無線LANルーター
写真3●実売80~90米ドル程度のIEEE 802.11nドラフト2.0対応無線LANルーター
台湾ギガバイト・テクノロジー製。無線LANチップには台湾ラリンク・テクノロジー製を採用する。
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