NTT東西の固定電話サービスに比べると,フレッツ網やひかり電話のトラブルの頻度は高い。2006年秋はNTT東西でそれぞれ3日間ずつ,ひかり電話で障害が発生。2007年に入ってからもフレッツ網などでトラブルが続いた。

 フレッツ網やひかり電話が固定電話よりも“よく落ちる”理由として,記者会見などでは,「長い間サービスを提供してきた固定電話網と比べると,サービスの歴史が浅いフレッツ網やひかり電話網といったIP技術をベースとしたネットワーク運用の経験やノウハウが少ない」と説明するのが一般的になった。ただし,実はその前提となるもう一つの理由があるという。

 NTT東西はその理由が,「そもそも,固定電話の交換機とフレッツ網やひかり電話で使うルーターやサーバーなどの通信機器の信頼性には大きな差がある」ことだという(図4)。

図4●障害が少ない交換機網と,障害が頻発するIP網の違い
図4●障害が少ない交換機網と,障害が頻発するIP網の違い
NTT東西ともに,「電話交換機は細部のパーツまでNTT仕様で固めた電話交換機を使っていたが,IP網は市販の通信機器を使っているため,交換機網よりも信頼性が落ちる」,と話す。

コストは高いが信頼性も高かった交換機

 固定電話の交換機は,NTTと交換機メーカーが共同で開発した“NTT仕様”と呼ばれるもの。高コストだが,細部のパーツまでNTT仕様の基準で設計してあるため,信頼性が高い。

 その一方でルーターやサーバーは,通信機器メーカー各社が開発/製造しているもの。こうした機器を調達する際は,「我々の要求する機能に適合するように,メーカーの機器を仕様化している。単純に市販のものではない」(NTT東日本の小出利一ネットワーク事業推進本部企画部IPネットワーク統制室長),「一部仕様化しているが,ベースは市販の機器」(NTT西日本の築村担当部長)という。東西でやや言い方は異なるが,NTTが自ら開発にかかわって信頼性を上げている交換機に比べ,通信機器の信頼性をメーカーに依存する部分が大きい。

 こうした機器の成り立ちの違いが,交換機で構成する固定電話網と,ルーターやサーバーで構成されるフレッツ網などIP網全体の信頼性の違いとなって現れる。「ルーターやサーバーなどは,通信機器を構成する一つひとつのパーツ・レベルの信頼性がメーカーによって異なり,それらがいつどのように故障するか分からない。当然,交換機よりも運用が難しくなる」(NTT東日本の河野担当部長)。

 こうした状況であるため,「割安なフレッツ網を使いつつ,信頼性も高めたい」と考える企業は,バックアップを用意しておくなどユーザー側の障害対策がしばらく必要になるだろう。