車載通信機器などを製造・販売するヨコオが、日本での成功体験をもとに中国でトヨタ流改善を始めたのは2006年。その中心人物である多胡 一男氏に、取り組みの詳細をほぼリアルタイムでメルマガに寄稿してもらった。1年前の話ではあるが、現地に改善活動を根づかせるためには何が課題となるのかなど、中国で改善に取り組もうとする企業にとっては大いに参考になるだろう(日経情報ストラテジー編集部)。
多胡 一男
東莞友華汽車配件有限公司(ヨコオの中国法人) OJT-Sプロジェクト 経理担当
皆さん、こんにちは。中国からの第4回目となります。
(原文は2006年10月4日付け日経情報ストラテジー・メール)
前回の報告で「職場診断」と「5S(整理・整頓・清掃・清潔・しつけ)チェック」の実施状況とモデルラインの選定についてお話ししましたが、今回はOJT-S(トヨタ生産方式に基づく職場改善・人材育成)活動のなかで「こだわり」を持ち続けている『基準づくり』についてお話します。我々の活動は難しい理論を並べて改善活動を進めることよりも、「ものづくり」をする上で基本となる基準をキチっと整備し、それを職場へ展開し定着をさせることです。
■カイゼン活動
【1】標準作業の設定標準作業は、人の動きを中心として、高品質な物を安全かつ効率的に生産するため、品質・コスト・納期を考慮して作業のやり方を決定したもので、物のつくり方、管理の根幹をなすものです。
時間測定:モデルラインの作業を動作ごとに分解して掛かる時間を測定し、作業ごとに標準時間を設定します。
標準作業:標準時間を基に作業を組み合わせ、生産数に応じた最適な人員編成をします。また、仕事の区分ごとに仕掛かり数などを設定します。
実際に設定した標準作業を定着させながら、工程内のムダ取りを進めてきましたが、実績が思うように上がってこない問題に直面しました。
原因として上がってきたのは、(1)部品/副資材の供給、(2)トイレへ行くための離席の2点でした。この2つの原因で設定時間よりかなりのロスが発生していました。
現在は部材供給・離席対応専任者を置くことで可動率が良くなりました。今はさらなるカイゼンのネタ探しに奔走中です。
【2】工程内の基準づくり工程を設定する上で必要となる治具や設備などの考え方の基準作りに着手しています。作業者が作業しやすいように、部品を置く位置や設備からの配線の仕方、作業手順書の内容などについてのカイゼンに取り組んでいます。
次に取り組んでいるのが、「作業者教育の仕組み」です。中国の作業者の定着率は決して高いとはいえず、毎月3%前後の入れ替えがあります。モデル職場での新人教育は「品質を第一」に考え、3つのステップ(やらせてみせて/フォローする)を繰り返しながら基本作業を習得させ、次に作業範囲を複数にしていきます。また指導者に対しては、教えるポイントの教育を継続的に展開中です。
■中国事情
天候
例年に比べ8月は晴れの割に気温が上がらず、過ごしやすい日が続きました。中国に数年間、赴任しているメンバーによると今年の天候は異常だと言っており、それが幸いしています。
お盆休み
こちらでは日本のお盆休みにあたる休みはなく、平常通りの仕事でした。10月前半に国慶節(建国記念日)があり、赴任以来初めての4連休です。この機会に中国国内を観光する予定です。
生活
赴任後3カ月が経過し、工場周辺や近くの街の様子は大分わかりましたが、独りでの外出には少し緊張感を持って行動しており、いつも携帯電話と行動をともにしています。
では、次回をお楽しみに!
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