Q: 失敗プロジェクトの尻ぬぐいや助っ人ばかりやらされて,モチベーションが保てません。

いつも失敗したプロジェクトの尻ぬぐい,工程が大きく遅延したプロジェクトの助っ人ばかりやらされていて,モチベーションが保てない。また,それらは評価対象外なので,成果主義を導入している弊社では昇進や昇給に全くつながらない。
(SE兼プログラマ/男性・37歳)

A: 「助っ人」そのものが高度な専門スキル。自信を持って経営層にもの申せ

 まず,あなたは会社にとってかけがえのない存在,つまり,前回の分類で言えば「スター」なのです。その自覚とプライドを忘れないようにしましょう(図1)。

図1●「やる気」と「能力」による分類
図1●「やる気」と「能力」による分類

 私の経験では,あなたのような人材を会社は必ず評価していて,出世も早いはずです。それが顕在化していないので悩んでいらっしゃるのでしょうが,時間の問題のような気がします。

 確かに成果主義では「助っ人」は対象外かもしれません。しかし経営者にとっては,だからこそ大事な存在です。「何かあったらあいつに任せておけばよい」というのは,SEとして最も誇りを持ってよいセリフのはずです。

 ただし,しょっちゅう「緊急出動」するようでは,これは根本的にマネジメントがおかしいと言えるでしょう。現場に深く入り込んだあなたであれば,その問題点を的確に指摘できるはずです。

 私なら,それらの問題点を構造的にまとめて,経営者に改善要望を出します。マネジメントにアドバイスできるということは,それ自体が経営者への第一歩です。自身を持って主張すべきです。

 経営者が私のような意識を持っておらず,また改善要望も無視するようでしたら,転職をお勧めします。あなたのような人材は引く手あまたです。

 私の知り合いに,「助っ人」専門の会社で成功している方もいるぐらいですから,これそのものが,高度な専門スキルです。会社を飛び出しても十分やっていけるでしょう。

Q: SEから他職種に移る人材が多いです。このため,現場でマネジメント層が足りません。

人材公募や転職などでSE職から他職種に移る人材が多いです。このため,現場ではSEのマネジメント層が足りません。さらに,労働組合の非組合員になりたがらないSE職も増えていると耳にします。どうすればこの状況を改善できると思われますか?
(SE/男性・30歳)

A:コミュニケーションと制度の両方で,現場の若手の士気を向上させよ

 私の経験から,この状況は経営によって改善できます。

 SEの仕事が“3K職場”と言われるようになって既に久しいですね。確かに仕事はきついです。でも,おっしゃるような現状は,「達成感のなさ」や「将来に夢が持てないこと」が大きな原因だと思います。

 20年前はシステムも今ほど複雑ではなかったので,自分が全体のどの部分の仕事をしているのか,若手でも分かりました。自分の貢献が分かりやすかったのです。出来上がったシステムの稼働を,お客様と抱き合って喜ぶこともありました。

 ところが現在のような複雑なシステムでは,自分が担当する局所的な分野しか視野に入らず,達成感はなかなか得られません。ネットワークを担当するSEはアプリケーションが分からず,その逆もまたしかりです。「自分はずっとこんなことをしていくのだろうか」と思うと達成感もなく,将来も不安になります。

 私は多くのIT企業を見てきましたが,この状況をうまくマネジメントしている経営者は,例外なく,コミュニケーションと制度の両方で現場の若手の士気を向上しています。

 コミュニケーションとは,現場改善活動のような若手でも参加できる枠組みの中で,経営者が現場の声をじっくり聞く,というようなものです。若手と定期的に懇親会を開いている企業もあります。若手に「自分達は見捨てられていない」という実感を与えることが第一なのです。

 制度とは,スキルアップとキャリアパスです。独立支援制度もそのひとつかもしれませんが,これは一時よりは下火です。やはり,必要なスキルを明確に定義し,その向上を会社が積極的に支援するのが,若手にとっては心強いようです。ある中堅会社は売上の5%を必ず教育に割いていますがが,この会社の離職率は非常に低いです。

 管理職としてだけではなく,SEとしても役員と同等のキャリアを用意する,いわゆる「専門職制度」も効果的です。

 また,ある会社は優秀なSEをすべて個人契約にする,という仕組みにチャレンジしました。顧客から受け取る単価の8割を個人に支給する,というように契約に透明性を持たせることで,若手の収入は増し,離職率は下がったそうです。

 このように,経営次第で,若手をつなぎとめる手段は数多く存在するのです。