Virtual Server 2005 R2は,x64対応の64ビットOS上で稼働するようになった。64ビット化の最大のメリットは,大容量のメモリーをリニアに扱えることだ。複数のOSを同時実行する仮想化ソフトウエアにとって,大容量メモリーが利用できるメリットは大きい。ここでは,64ビット化の特徴を説明し,64ビットのホストOSで稼働したときの性能を,ベンチマーク・テストによって調べた。それによると,同一ハードウエアで同一仮想マシンを稼働させた場合,32ビット版Windowsと32ビット版Virtual Serverの組み合わせに比べて,64ビット版Windowsと64ビット版Virtual Serverの組み合わせの方が,処理性能が約18%高かった。

64ビット化されたVirtual Server

 数年前までは32ビット・システムだったx86アーキテクチャも,今では64ビット化され,「x64」(AMD64とIntel64の総称)と呼ばれる。AMDやIntelが提供しているx86互換プロセッサは,今やほとんどが64ビット対応だ。

 Virtual Server 2005 R2にも,x64に対応した64ビット版が用意されている。対応するOSは,Windows Server 2003 x64 Edition,同R2 x64 Edition,Windows XP Professional x64 Editionである。64ビットOSに64ビット版Virtual Server 2005 R2をインストールすると,以下のコンポーネントが64ビットで動作する。

(1)VMMドライバ
(2)VMNS(ネットワーク・ドライバ)
(3)Virtual Serverのサービス
(4)Webアクセス用のActiveXコントロール

 64ビット化の最大の利点は,広大なメモリー空間を利用できることだ。32ビット版でもAWE(Address Windowing Extensions)に対応しているので,最大64Gバイトのメモリーを扱える。だがこの方法は,非ページ化メモリーを32ビットのアドレス空間に動的にマッピングしながらアクセスさせているにすぎない。一方,直接64Gバイトのメモリーをアドレッシングでき,リニアにアクセス可能な64ビット版の方が高速にアクセスできる。メモリー・アクセス性能は,仮想化ソフトウエアの処理性能に大きく影響を与える。

 なお,メモリーの割り当てに関しては,NUMA(Non-Uniform Memory Access)に対応したマシンでも利点がある。Virtual Server 2005 R2は,仮想マシンを起動するときに,NUMAノードを考慮して各仮想マシンのメモリーを割り当てることも可能だ。つまり,仮想マシンをNUMAノード内に収めることで,パフォーマンスの向上が見込める。

ベンチマークで効果を確認

 ここでは,前回で使用したベンチマーク・テストを,64ビットOS上のVirtual Server 2005 R2環境でも実施した(テスト方法は前回を参照)。同じ仕様の2台のサーバーを用意した。それぞれにWindows Server 2003 R2 Enterprise Edition(32ビット)と,Windows Server 2003 R2 Enterprise x64 Edition(64ビット)をインストールし,それぞれVirtual Server 2005 R2の32ビット(x86)版と64ビット(x64)版を動かした。各Virtual Server上には,4台の仮想マシン(32ビット環境)を稼働させ,それらの仮想マシンに対して負荷を与えた。結果は,同じ仕様のハードウエアにもかかわらず,64ビット版Virtual Server 2005 R2の方が,32ビット版に比べて約18%高い性能が見られた(図1)。

図1●ベンチマーク・テストの結果。同じハードウェアでも、64ビット版は32ビット版よりも18%高い性能が見られた
図1●ベンチマーク・テストの結果。同じハードウェアでも、64ビット版は32ビット版よりも18%高い性能が見られた

 このように,64ビット版のVirtual Serverを利用することで,より多くのメモリーを使うことができ,より多くの仮想マシンを稼働させることが可能となる。また,ベンチマーク・テストの結果から確認できたように,64ビット化による処理性能の向上も期待できる。

 現在ではほとんどのサーバー機がx64に対応しており,ホストOSになるWindowsのライセンス料はx86版とx64版で違いがないことを考えると,Virtual Serverを稼働させるならばx64版にするメリットは大きい。

 また,新たにリリースされたVirtual Server 2005 R2 Service Pack 1では,x64ベースのホストを使用する場合,256Gバイトの大容量メモリーまで対応している。もしも,メモリー容量の問題で仮想化環境をあきらめていたならば,今はそのような問題は克服されていると考えるべきだ。

日本ヒューレット・パッカード 小林 直史(こばやし なおふみ)
 日本ヒューレット・パッカードのシステム技術本部に所属するテクニカル・コンサルタント。IA サーバーのセントラル部門にてパフォーマンス検証,サーバー・サイジングなどの技術検証や案件のバック・サポートを担当した後,パートナ・ビジネスにおいてストレージを中心としたプリセールス活動に従事する。