今回は,ソフトウエア・プロダクトライン開発の考え方を取り入れている企業の事例を紹介しよう。

 NECビッグローブは,ソフトウエア・プロダクトライン開発の考え方をベースに,基幹業務アプリケーションを効率よく開発する体制の整備を1999年に開始した。

 同社の基幹業務アプリケーションは,対象となるサービス商品が異なっても,顧客/料金などのエンティティ(データの集合)とエンティティに含まれるデータの処理形態は,それほど変わらない。そこで各サービス商品に対応した複数のシステムを一つのプロダクトライン(製品系列)とみなして,「新サービスを開始するときに,対応するシステムを迅速に開発できる体制を築いてきた」と,NECビッグローブの檜垣清志氏(サービス開発本部 グループマネージャー)は語る。

 2003年以降は,プログラミングをしないで,ソフト部品の組み立てだけで,素早く開発できるようになった。実際,毎年60案件ほどに上る開発を約10人のSEでこなしている。

 同社ではまず,基幹業務アプリケーションを構成する2種類のソフト部品を用意した(図1)。画面や帳票を表示するための部品やデータベース・アクセス部品といった「汎用部品」と,データの入力チェックやトランザクション管理を担当する「業務固有の部品」である。

図1●NECビッグローブがソフトウエア・プロダクトライン開発の考え方をベースに構築した開発手法
図1●NECビッグローブがソフトウエア・プロダクトライン開発の考え方をベースに構築した開発手法
基幹業務アプリケーションを構成するソフト部品を用意したうえで,新システムを素早く開発する手法を整備した
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 それらの部品を使って,「利用者を登録する」「サービス商品を契約する」といったユースケース(利用場面)ごとに,画面/画面遷移を担当する「UIユニット」と,トランザクション処理を担当する「Trユニット」を組み立て,この二つのユニットを連携させることでシステムを完成させる。

 Trユニットを組み立てるための標準的な手順も定めている。図1右にTrユニットを組み立てる手順を示した。図に示したように,「アクションパタン表」「データマッピング表」「データ加工表」という3種類の表を作成するだけでいい。UIユニットについてもTrユニットと同じような表を使って,画面部品などを組み立てる手順を定めている。これにより,ユースケースが200程度のシステムなら,1カ月以内で開発できるという。