富士通研究所は,IPネットワーク上で提供されるサービスの体感品質「QoE」(quality of experience)を可視化する技術を開発した。QoEとQoS(quality of service)をリアルタイムに対応付けるという特徴を持っており,QoSとQoEの相関をコンテンツ別に調べることができる。

 通信品質を示す言葉としては,これまでサービス提供者から見たサービス品質を意味するQoSが広く使われてきた。ところがNGN(次世代ネットワーク)の世界では,ユーザーから見たネットワークの品質となる「体感品質」が重視されている。この体感品質を意味する言葉がQoEである。

 富士通研究所が開発したQoE計測技術は,音声通信向けと映像配信向けで別のシステムを用いる(図1)。音声通信の場合は社内ネットワークのゲートウエイに計測用プローブを配置し,エコーとノイズを検出してQoEを評価する。エコーは,電話機から発する音(送話音)と通話相手から送られる音(受話音)の周波数の類似度が大きければ「エコー有り」と判定。通話中のノイズは,受話音の波形変動を分析して検出する。

図1●富士通研究所が開発したQoE計測技術
図1●富士通研究所が開発したQoE計測技術
音声と映像配信のQoEをQoE計測プローブで数値化する。映像についてはQoSとの相関もわかる。
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 映像のQoE評価では,QoS(パケット・ロス率)との相関もリアルタイムに測定する。このため,計測用プローブに加え,ネットワーク品質エミュレータ,映像品質評価装置,プロファイル作成装置を組み合わせる。

 まず,エミュレータで配信映像に故意にパケット・ロスを発生させて劣化映像を作る。これを映像品質評価装置で原映像と比較し,パケット・ロス率ごとのQoE指標値を計算する。QoE指標値は,プロファイル作成装置で映像の特徴別にQoEとパケット・ロス率の相関性モデルである「プロファイル」に仕立てられて計測プローブに配信。計測プローブがキャプチャした映像のパケット・ロスとプロファイルとを照らし合わせて,QoEの値をはじき出す。

キャプチャ漏れ検知で低コストに

 計測用プローブのハードウエアは,高い処理能力を必要としないという。キャプチャ漏れ発生の可能性を検知し,漏れた部分を計測対象から除外する独自技術を導入したからだ。

 富士通研はQoE計測技術を「ネットワーク上で人を介さずにエラーを検知したり,問題個所の発生原因を解析したりする仕組みを作る場面で実用化を進めたい」としている。