ウィルコムのサービスは小規模事業者向け

 最後にPHS事業者のウィルコムのサービスについてまとめておく。

 同社が提供するリモートからの端末管理サービスとしては,全端末向けの「My WILLCOM」とW-ZERO3シリーズを主にターゲットとした「WILLCOM Sync Mobile」の二つがある。ただし,いずれも個人向け/小規模事業者向けのサービスで,大規模には利用できない。

 「My WILLCOM」は,利用料金が無料のサービス。インターネットを介して最大30台の端末を管理し,ロックおよびロックの解除が可能だ。他社のサービスとは異なり,インターネット経由で端末を初期化することはできない。

 端末を初期化する場合は,利用者が消去したい端末に向かってコマンドを書いたショート・メッセージ(ライトメール)を送るか,PHS/ISDN電話機から端末を呼び出し,ISDNのサブ・チャネルで制御コマンドを渡す。端末の初期化はウィルコムのほぼ全機種で利用可能だ。ただし,My WILLCOMはバックアップの機能を提供していない。ユーザーは端末の初期化に備えて,データをパソコンにコピーしておくなどの対策が必要となる。

 「WILLCOM Sync Mobile」は,携帯電話とサーバー間のデータ同期サービス。メールやスケジュール,連絡先などを同期することができる。フィンランドノキアの「Intellisync Mobile Suite」を利用したもので,キャリア型より次ページからの統合型に近いサービスだ。利用料金は月額1800円である。

 管理はインターネットを介して実行できるが,複数の異なるユーザーの端末を一括して管理することはできない。管理画面からは端末の初期化とロックのほか,専用アプリケーションで管理しているメール/スケジュール/連絡先データの削除が可能である。なお,端末側のデータを削除しても,サーバー側に同じコピーが残っているので,実質的にバックアップの機能を持つといえる。

 ここまで述べた各社のサービスを表1にまとめた。サービス選択の参考にしてほしい。

表1●キャリア型サービス一覧
管理者による機能制限機能やバックアップの機能などで違いがある。
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表1●キャリア型サービス一覧

Suicaや入館証を携帯のカギに

 時間の経過や開閉動作によって強制的に端末にロックをかけたとき,使い勝手の悪さが問題になる。電話をかけようとするたびに,いちいち4ケタの数字を打ち込まなければならないのは利用者の立場からすると面倒だ。パスワードの代わりに,指紋や顔,声紋など身体的な特徴を利用してロックを解除できる携帯電話もあるが,これも面倒。利用前にわざわざ指を押し当てたり,顔をカメラに合わせたり,声を出すのは煩わしい。

表1●キャリア型サービス一覧

 こうした煩わしさを緩和してくれそうなのが,NTTドコモのN903i/N904iが備えるFeliCaを利用した端末のロック解除機能だ。

 利用方法は,あらかじめ登録したFeliCaチップを内蔵したカードに,ロックされている携帯電話を押し当てるだけだ。キー操作や指の押し当てなど面倒な動作は必要ない。

 登録できるFeliCaカードは2枚まで。次のような使い方が想定できる。

 FeliCaを内蔵したオフィス・ビルへの入館証と,Suicaの定期券を登録しておく。入館証はカード・ホルダーに入れて首にかけていることが多いので,カードを取り出すことなく,そこにタッチして携帯電話のロックを解除する。入館証を忘れた場合は,定期券で代用できる。

 また,登録したFeliCaカードが2枚とも身の回りにない場合は,FeliCaを使わずに4ケタの数字でロックを解除することもできる。