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躍進企業に学ぶ究極の「見える化」

第1回 衣類の電子カルテをWebで公開--ハッピー

目次 康男=日経コンピュータ 2007/10/15 日経コンピュータ
出典:日経コンピュータ 2007年9月3日号120ページ
(記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります)
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 ワイシャツ1000円、ジャケット2700円、ワンピース4000円ーー。大手クリーニング・チェーン店の5倍近い料金にもかかわらず、国内はもとより海外からも注文が殺到しているクリーニング店がある。京都府宇治市に本社や工場を構える「ハッピー」だ。年商2億2000万円と小規模ながら、2002年の創業から年率26%の勢いで売り上げを伸ばし続けている。

 同社は無店舗型のクリーニング業。注文はWebサイトか電話で受け、宅配事業者が衣類を受け取ったり納品したりする。店舗がないにもかかわらず、同社が約4万人の顧客から支持を得た最大の理由は、電子カルテによるクリーニング業務の「見える化」だ。

 同社は、衣類を型くずれさせずに洗浄したり、固定化したシミや黄ばみを落とす独自の技術を持っている。だが、「優れた技術を持っているだけでは、顧客の信頼は得られない。“そこまでやるのか”と顧客が驚くくらい、作業内容や品質を見える化したことが、当社の競争力につながった」と橋本英夫社長は強調する。

1着ごとに150項目のデータを登録

 一般的なクリーニング・チェーンの場合、店頭で商品を細かく確認したり、顧客の要望を細かく聞くことはほとんどない。そのため、「色が落ちた」「サイズが縮んだ」といったトラブルが、納品後に露呈する。しかも、大量の衣類を一気に処理するため、「いつ、どこで、誰が、どのように洗浄したのか」といった情報は管理できていない。「“安さ”と“スピード”を競争力とする一方、顧客の不満は野放しになっている」と橋本社長は指摘する。

 これに対し同社では、衣類が届くと1着ごとに電子カルテを作成し、袖丈や胴回りといった寸法や、表地や裏地の種類、生地の傷み具合や汚れの種類・大きさなどのデータを、10~20分かけて電子カルテに登録していく(図1)。データの項目数は、1着当たり約150種類に達する。

図1●ハッピーは衣料クリーニングの作業工程や品質を「電子カルテ」で見える化
図1●ハッピーは衣料クリーニングの作業工程や品質を「電子カルテ」で見える化
[画像のクリックで拡大表示]

 さらに、この電子カルテをWebサイトを通じて顧客に個別に公開し、依頼内容や洗浄方法、色落ちなどのリスクを担当者が電話で顧客に説明。併せて、「袖口や裾のホツレを修復しますか?」「汚れを完ぺきに落とそうとすると、生地の風合いが損なわれます。風合いを残すために、汚れが目立たない程度に洗浄する方をお奨めしますが、どうしますか?」など、顧客の要望を聞き出し、電子カルテに書き込んでいく。

 クリーニング工場にはパソコンが並べられ、担当者は電子カルテを見ながら、1着1着、時間をかけて衣類を洗浄したり、アイロンを掛けたりする。作業が終わって顧客に納品する際には、作業結果を記入した電子カルテとアンケート用紙を同封し、顧客の意見を聞く。もし不満が寄せられたときは、カルテを見ながら、顧客の要望に真摯に対応するよう努めている。

 低価格・短納期の大手クリーニング・チェーンと“真逆”のサービスだが、それでも同社には毎月4000~6000着の注文が寄せられている。「仕事の質に対する信頼感を勝ち取ることで、“愛着のある服は、多少お金をかけても、信頼のおける業者に頼もう”という顧客の心をがっちりとつかめた」と橋本社長は強調する。

妥協せずにトコトン追求する

 橋本社長がクリーニングの「見える化」に着目したのは、過去の苦い経験がある。1979年にクリーニング会社を設立し、90年代には約40店舗のチェーン店を構えるまで成長したものの、顧客からのクレームが後を絶たなかったのだ。「顧客の顔を見ていなかった」と、橋本社長は振り返る。

 約150項目におよぶ電子カルテの内容は、当時のクレーム情報が生きている。生地が伸縮したかどうかを検証するには寸法データが不可欠。色落ちを検証するには、生地の材質や染料などのデータが必要だ。表地や裏地、襟の芯など、材質を細かく把握すれば、型くずれも防げる。「衣類が1000種類あれば、洗い方も1000種類ある。そのために必要な情報をトコトン突き詰めた結果」と橋本社長は語る。

 これらのデータを管理する電子カルテ・システムは、知り合いのITベンダーからエンジニアを引き抜き、自社で開発した。いくつかのITベンダーに相談したが、「当社の事業を理解してくれなかった」(同)からだ。「表計算ソフトでプロトタイプを作ってみたり、模造紙いっぱいに画面やデータの流れを描いてみたりと、IT担当者と四苦八苦しながら形にしていった。だからこそ、今のシステムに愛着もあるし、自信もある」と橋本社長は言い切る。

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