ソフトバンクBBが,どのインターネット接続事業者(ISP)と契約していても使えるIP電話サービスを開始した。ユーザーのADSLからFTTHへの移行に伴って,ISPや通信事業者と同時にIP電話サービスも乗り換える動きに対応した格好だ。当初は個人向けに提供するが,今後は企業向けのサービス・メニューも加えていく。

 ソフトバンクBBが9月に始めた「my BBコミュニケーター」は,050番号を使うIP電話サービス。基本料金は月額315円で,通話料は固定電話の場合で3分8.3895円である。サービスの最大の特徴は,ソフトバンクBBが提供中の「BBフォン」や「BBフォン光」のユーザーと相互に無料通話できること(図1)。現在約480万人いるBBフォンのユーザーが,無料通話の対象となる。

図1●ソフトバンクBBの「my BBコミュニケーター」の特徴
図1●ソフトバンクBBの「my BBコミュニケーター」の特徴
ほかのインターネット接続事業者(ISP)を利用でき,インターネット部分はIPsecでデータを暗号化する。今後企業向けにグループウエアのサービスを提供する予定。
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Bフレッツ利用者にもBBフォンを

 my BBコミュニケーターは,ソフトバンクBB以外のブロードバンド回線とISPを組み合わせるユーザーでも利用できる。同社がこうした新機軸を打ち出した背景には,ブロードバンド接続やIP電話のサービスを取り巻く環境の変化がある。FTTH加入者数が伸びている一方で,同社のADSL契約回線数は2007年6月末公表分で減少に転じている。しかもADSLからFTTHに移行するユーザーを,自社の光ファイバ・サービスで巻き取れていない。また,ユーザーの1カ月当たりのBBフォン通話料は減少傾向にあるという。つまり,IP電話サービスの加入者を増やす必要性に迫られていたのだ。

 そこで「IP電話のユーザーを増やすため,対象を自社のADSLの利用者以外にも広げる」(コミュニケーション・ネットワーク本部の野田真副本部長)ことにした。my BBコミュニケーターの最大のターゲットは,NTT東西のBフレッツのユーザーである。

 ソフトバンクBBは,my BBコミュニケーターをほかのISPに卸売りして,ここでも新規ユーザーの獲得を目指す考えだ。ただし現行のBBフォンのユーザーは,ISPなどを変えると050番号をmy BBコミュニケーターに移行できないため注意が必要だ。

グループウエア追加で企業に訴求

 ユーザー側の端末としては,サービスに対応したルーターにつながる電話機や,パソコン上で動作するソフトフォン,ソフトフォン入りのUSB機器を利用できる。端末が送受信する呼制御や音声,映像などのデータは,インターネットを経由する間はIPsecで暗号化されている。

 my BBコミュニケーターはIP電話を核に,パソコンで使うメールやチャット,プレゼンス,テレビ電話,スケジューラ,アドレス帳なども使える統合コミュニケーション・サービスとして提供する。当初は個人向けだが,将来は企業向けメニューも強化する。

 具体的には,Microsoft Outlookをクライアントとして使えるグループウエア・サーバーを提供する予定。既にSIP(session initiation protocol)やグループウエアのサーバー機能を兼ねられる米コミュニゲート・システムズの「CommuniGate Pro」をベースにしたサービスになっている。

 野田副本部長は,「企業向けには,個人向けよりも高いセキュリティを提供したい」と話す。今後,クライアントをスマートフォンに対応させる計画もあるという。