川崎汽船のCIOである守田敏則・取締役常務執行役員 |
「営業部門など現場の人が『こういうことをしたい』というときに、『情報システム部門はすぐにやってくれない』となってはダメだ。昔と違って今は、システム部門が対応しなければ、現場で勝手にエクセル(表計算ソフト)やアクセス(データベースソフト)をベースにしたツールを作られてしまう」
川崎汽船のCIO(最高情報責任者)である守田敏則・取締役常務執行役員(人事 、情報システム、総務、法務担当)はこう話す。守田氏は目下、内部統制を考慮に入れつつ現場にとって使いやすい営業システムのあり方を模索している。そのために今年9月、コンテナ、自動車、定期船などの各営業部門に、合計約10人の「IT担当」を置いた。月に1度集まって、新しいシステムのあり方を議論している。「営業部門が主体になって、ワイワイガヤガヤ議論する状況を作りたかった」という。
「現場主体」は守田氏の一貫した方針だ。1973年に川崎汽船に入社し、5年間を情報システム部門で過ごしたが、その後は営業部門などで経験を積んだ。「(海運業では)日本だけではなく、海外各地の現地法人や代理店などを抜きにしては物事が動かない。国によって事業環境や法規制などは違う。私も利用部門側にいたときに『このシステムを使え』と言われるのは嫌だった。情報システムを押し付けないようにしたい」と話す。
昨年6月にCIOに就任して以来、4つの柱を立てて各種施策を実行してきた。「安定した安全なシステム環境」「営業システムの改良」「内部統制を念頭に置いたビジネスプロセス改革」「人材育成」の4つだ。
「幸い、私は役員として人事も担当している」。特に、現場主体の情報システム推進体制を支える人材育成には注力してきた。従来はシステム子会社に人員が集中し、川崎汽船本体には情報システム部員が3人しかいなかったが、これを6人に倍増させた。システム人材を海外に派遣したり、本社の人材をシステム子会社に送り込んでシステムの知識を身に付けさせたりという人材育成策も進めている。
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