「ニコニコ動画」というWebサイトをご存知でしょうか?今,人気急上昇中の動画投稿サイトで,ニワンゴという会社が運営しています。サイトのオープンから1年もたたないうちに300万人を超える登録ユーザーを集め,話題となっています。このニコニコ動画の魅力を簡単に説明しましょう。

 動画投稿サイトと言えば「YouTube」が有名です。ニコニコ動画も基本的にはYouTubeと同じような機能を持っています。ユーザーが動画を投稿し,それをWebブラウザで視聴できるというものです。

 しかし,ニコニコ動画にはYouTubeには無いさまざまな特徴があります。

ツッコミを入れ,みんなで共有

写真1●動画の上にコメントを書き込めることがニコニコ動画の最大の特徴
写真1●動画の上にコメントを書き込めることがニコニコ動画の最大の特徴
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 ニコニコ動画の一番大きな特徴は,動画の感想などのコメントを“画面の上”に書き込める機能です(写真1)。コメントを動画の下の掲示板に書き込むYouTubeとは,この点が大きく異なります。しかも,コメントは動画の特定の場面に対して書き込めます。テレビを見ていて,テレビの内容に対して“ツッコミ”を入れた経験は誰でもあると思いますが,そのノリでコメントを書き込めるのです。

 動画の上にコメントが表示されると,「動画が見えにくいのではないか」と思ってしまいそうですが,実際は画面の上に書き込めることで多くの効果を生み出しています。まず,視線の移動がありません。動画と掲示板を交互に見る必要がないので,使い勝手を非常に高めています。また,カラフルなコメントの文字は,それ自体が動画の付加価値になっており,動画を見る楽しみを高めています。

 書き込まれたコメントはユーザーの間で共有されます。他のユーザーがその動画に対してどのような感想や意見を持っているかが分かります。動画とその上に表示されるコメントを同時に見ていると,多くの人と一緒にテレビを見ているかのような感覚になります。この新しくて懐かしい(銭湯の脱衣所でテレビをみんなで見ているような?)感覚がニコニコ動画の最大の魅力です。

タグやニコニコ市場を楽しむ

写真2●タグやニコニコ市場でも楽しめる
写真2●タグやニコニコ市場でも楽しめる
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 ニコニコ動画の面白さはそれだけではありません。動画への「タグ付け」や「ニコニコ市場」も重要な要素です。

 まずタグ付けですが,本来は,例えばネコの動画に対して「ネコ」や「動物」といった属性情報を加える機能です。この情報は検索エンジンに対する被検索文字列となります。動画の場合,動画内容の分析による検索は極めて困難なので,文字列を付加情報として持たせることで,検索を容易にします。これはYouTubeにもある機能です。

 しかし,ニコニコ動画の場合,タグ付けが本来の使われ方だけではなく,一種の表現の場となっています。具体的には,「吹いたら負け」や「孔明の罠」といったユニークなタグが使われ,人気を集めています。吹き出すほど面白い動画には「吹いたら負け」を付け,何らかの計略が仕掛けられている様子を映す動画には「孔明の罠」を付ける,といった具合です。YouTubeと異なり,タグ付けは動画の投稿者以外のユーザーもできます。この柔軟性がタグを面白く,言葉遊びができる場へと進化させています。

 ニコニコ市場も同様です。ニコニコ市場は動画に関連のある「Amazon.co.jp」の商品を表示する機能ですが,これも本来の使われ方を超えた表現の場になっています。

 ニコニコ市場は,一見,検索エンジン連動型広告に見えますが,実は違います。表示する商品の選択はユーザーの手によって行われます。ユーザーは動画に関連する商品を自由に設定できます。タグ付けと同じように,ユーザーが自由に選択できるからこそ,いろいろな面白いことが起こります。

 例えば,写真2は「クラッシャーは大変なキーボードを破壊していきました」というニコニコ動画で人気のある作品なのですが,ドイツ人の少年が話す言葉が日本語の「胡麻」に聞こえるため,コメントに大量の「胡麻」の文字が書き込まれています。そして,ニコニコ市場では「ごまあえの素」が表示されています。

 このように,ニコニコ動画は「動画とそのコメント」で楽しみ,「タグ」で楽しみ,「ニコニコ市場」で楽しめるといった三段重ねの構成になっています。その結果,多くのユーザーを呼び込み,多数の動画が投稿され,短期間で人気サイトに成長したというわけです。