日常的に利用する器具をインターネットと結び付け健康につなぐ動きも拡大している。タニタはネット接続機能付きの体組成計や歩数計を利用。アディダスはGPS携帯を利用した新たなジョギングについてのイベントを開催した。

タニタ
計測機器にネットワーク機能を付加

 健康用品大手のタニタは、07年3月8日から通信機能を持った体組成計と歩数計を貸し出し、体重や体脂肪率、基礎代謝率などの情報をサーバー側で管理する「からだカルテ」のサービスを開始した(図1)。最低月額1200円(2年間まで)と一般消費者が利用しやすい価格帯を設定した。

図1●タニタが開発した「からだカルテ」
図1●タニタが開発した「からだカルテ」
体組成計で測った体重や体脂肪率をサーバー上で管理する

 タニタは、多くのパートナー企業と提携することで、からだカルテで提供できるサービスの種類を豊富なものにしていく計画だ。同社のヘルスケアネット/サービス推進部営業企画グループ/サービス企画・運営グループの坂井康展リーダーは「できるだけオープンな関係を築いて、様々な企業と連携したい」と話す。

 サービス開始と同時に、ダイエット食品の開発販売メーカーであるキリンヤクルトネクストステージと提携。「からだカルテ」の一部の機能を切り出し、ASP(アプリケーション・サービス・プロバイダ)形式でキリンヤクルトのWebサイトから利用できるようにしている。キリンヤクルトは、ダイエット効果を確認するためにからだカルテの機能を利用する。

 このほかにもフィットネスクラブ大手のNASと提携している。NASの施設で計測した体組成計や血圧計などのデータを、からだカルテを使って管理する。さらに食品メーカーとの提携や病院の電子カルテとの連動などを07年内に実現する予定だ。積極的に他業種とコラボレーションしていくことで、08年3月までに5万人の登録者数を目指す。

 体組成計と歩数計の新型機器の開発にも意欲的だ。07年度中に歩数計とデータを集めるUSBキーを一体化させた新型機に加え、パソコンなどを介さずにデータを登録できる携帯電話モジュール組み込みモデルなどを投入する。08年度には、機能を限定して利用価格を抑えた廉価版体組成計のほか、糖尿病発見に必要な尿糖計などもラインアップに加える。

 またデータ登録のインセンティブを利用者に与えるために、07年8月にネットマイルと提携。登録データの量などに応じて、インターネット・ショップなどで利用できるネットマイルのポイントを配布する。

 からだカルテのようなネットワークを利用するサービスはタニタにとって初の試み。坂井リーダーは「05年にサービスの提供を決めてから、2年以上をかけてシステムを開発してきた」と苦労を振り返る。

 開発に当たっては、通信するネットワークの仕様から、サーバーのシステム構築、USBメモリーのドライバーやファームウエアの開発、計測機器の仕様など「横断的に考える必要があったため、複数のITベンダーと協業しながら開発した」(同氏)という。全体の情報の流れを短期間に確定できなかったため、長期間の開発期間が必要になったという。

アディダス ジャパン
GPS携帯で走った距離を積算

 ITを使った健康ビジネスは、屋外にも飛び出している。スポーツ用品大手のアディダス ジャパンが07年4月23日からスタートさせた「adidas GPS RUN」というイベントがそうだ。adidas GPS RUNはジョギングした距離に応じてプレゼントが当たるというものだ。

 どのくらい走ったかを測定するために、NTTドコモやauのGPS機能付きの携帯電話を利用する。イベントの参加者は専用Webサイトで登録手続きを済ませ、GPS機能付き携帯電話に、GPS RUN用の無料アプリケーションをダウンロードする。ランニングを開始するときにこのアプリを起動すると、定期的にGPSによる位置データを検出し、携帯電話の地図上にポイントを記録する。

走ることをより楽しむ

 位置情報の変化をある程度記録した段階で、アディダス ジャパンのサーバーへ自動的にデータをまとめて送信。サーバーでは地図上のポイントを直線でつないで、走行距離や走行ルートなどが確認できる(図2)。GPSを使ったスタンプラリーのようなもので、参加者は時と場所を選ばず、イベントに参加できる気軽さが受けtた。

図2●アディダスジャパンはGPS機能付き携帯電話をWebサイトと連動させるキャンペーンを実施した
図2●アディダスジャパンはGPS機能付き携帯電話をWebサイトと連動させるキャン ペーンを実施した
GPS携帯電話を連動させたランニングキャンペーン「adidas GPS RUN」を実施。7 月末時点で2万人が参加した

 システムはアディダス ジャパンと外部のソフト会社などと共同で開発したものだ。7月末時点で約2万人が登録しているが、「一人ひとりが送信するデータ量はそれほど多くない。数千人が同時にアクセスしてもシステムは問題なく稼働する」(アディダス ジャパン)という。システム構成の詳細や開発にかかった費用は公表していない。

 単に運動履歴を管理するだけではない。途中でくじけそうになったとき、モチベーションを維持させるための手段も用意した。サッカー日本代表の中村俊輔氏や読売ジャイアンツの原辰徳監督などからの励ましの動画メッセージを、携帯電話に届けるなどの工夫を施している。

 9月末までの期間限定イベントだが、7月末時点で一番長い距離の目標(1200km)を走破した参加者も出てきた。「ジョギングは決して楽なスポーツではない。走ることをより楽しめるツールを提供して、目標に向けた努力の大切さを知ってもらいたかった。効果は十分出ていると考えている」(アディダス ジャパン)という。

 adidas GPS RUNは、アディダス ジャパンが日本独自に始めたもの。同社は「欧米に比べるとまだ日本ではジョギングが根付いていない部分がある。少しでも走る喜びを感じてもらうためにこのイベントを企画した」と話す。