詳細編 実際のWebアクセスをレイヤーで見てみよう
初公開日:2007/10/13
レイヤー1(物理層):データを信号にして送り出す先輩:Webアクセスするためには,まずケーブルでパソコンをつなぐよね。 新米:そんなの当たり前ですよ。 先輩:馬鹿にしちゃいけないぞ。これがレイヤー1の役割なんだ。すべての土台となる大切なレイヤーだ。 コンピュータで処理するデータは,すべて0と1からなるディジタル・データである。コンピュータ間で通信するには,この0と1のディジタル・データを送り出して,相手まで伝えなければならない。その役割を果たすのがレイヤー1である。 ディジタル・データを相手に届けるには,まず両者が物理的につながっていなければならない(図2-2)。機器同士をつなぐ最も一般的な方法は,ケーブルを使うことである。より対線ケーブルを使えば,ケーブル内部の銅線で両者がつながる。この銅線に信号を乗せて送り出せばいいわけだ。
つないだら信号の解釈を合わせる逆に考えると,2台のコンピュータが物理的につながっていないとディジタル信号をやりとりできない。たとえば,ケーブルのコネクタ形状とパソコン側のLANボードのコネクタ形状が合わなければ,ケーブルをつなぐことができない。 ただし,単にケーブルをつないだだけではまだ不十分である。レイヤー1の役割は,0と1を表すビット信号を相手まで届けることにある。つまり,ケーブルを伝わっていく電気信号や光信号と,0と1のビットを正確に対応付けておかなければならない。どんな信号が「0」でどんな信号が「1」なのか――という信号の解釈を決めておくのもレイヤー1の大切な役割だ。 それでは,具体例で見ていこう。たとえば,レイヤー1の代表的なプロトコルに加入電話用のモデム規格とADSL規格がある。ADSLモデムとアナログ・モデムは,お互いを電話線でつなぐことができるが,通信はできない。というのも,両者で信号の解釈が違うからである。 アナログ・モデムは,0.3k〜3.4kHzのアナログ信号を使ってディジタルのデータを送る。それに対してADSLは,26k〜1.1MHzという高い周波数のアナログ信号をデータ伝送に使う。ディジタル・データをアナログ信号に変換する変調方式もまったく違うから,当然ながら両者は通信できない。 このように,レイヤー1は,ケーブルの種類やコネクタの形状,信号波形といった物理的な部分を規定し,両者をつなぎ,さらに信号の解釈を合わせるという役割を担っている。 実際はいくつもの規格の集合体レイヤー1プロトコルの代表格にイーサネットの10BASE-T(テンベースティー)がある。では,10BASE-T規格はレイヤー1の二つの機能をどのように決めているのか,具体的に見てみよう(図2-3)。
10BASE-Tは,2対のより対線を持ったケーブルを使う。仕様書には,LANケーブルの特性を定めたEIA/TIA568-Aと呼ばれる規格のケーブルが利用できると明記してある。 さらに,ケーブル両端のコネクタ形状は,8ピンのモジュラ・コネクタを使う。一般にRJ-45と呼ばれるタイプのものだ。RJ-45の8本のピンのうち,1番と2番を送信用に,3番と6番を受信用に使う。10BASE-Tでは,両者をつなぐための物理的な部分をこのように決めている。 仕様書には,ビットの0と1をどのように解釈するかという決まりも含まれている。10BASE-Tでは,2本のピンの電位差が−1Vと+1Vになる電気信号で0と1を表すことになっている。また,「1ビットは100ナノ秒で表す」といった信号を送り出すタイミングも規定している。信号の符号化はマンチェスタ方式と呼ばれる方法を使う。 このように,いくつもの規格が組み合わされてはじめて,2台の装置の間で0と1のディジタル信号をやりとりできるようになるわけだ。 イーサネットには10BASE-Tのほかに,100Mビット/秒の規格である100BASE-TX(ヒャクベースティーエックス)や,1Gビット/秒の1000BASE-T(センベースティー)もある。100BASE-TXや1000BASE-Tも,0と1のビットを送り,それを認識するための規格である。つまりレイヤー1の機能を持っているということだ。 同じイーサでも仕様はいろいろでも,100BASE-TXも1000BASE-Tも,10BASE-Tとは違った符号化方式を採用している。速度はもちろん違うし,送り出す電気信号の形や,使うより対線の数や種類も違う。ということは,これら10BASE-T,100BASE-TX,1000BASE-Tの三つの規格は,同じレイヤー1の違う規格というわけだ。 もちろん,より対線を使うイーサネット技術だけがレイヤー1の規格ではない。電話線を使う加入電話用のモデムやADSLモデム,さらには,FTTHなどの光ファイバを使う技術もレイヤー1の規格になる。電波でデータをやりとりする無線LANや携帯電話も,それぞれ異なるレイヤー1の規格を使っているのである。 関連キーワード |