概要
NEC製の静音型PCサーバーと従来型(非静音型)PCサーバーの騒音レベルを無響室で計測した。結果,静音型は従来型と比べ9dBほど低く,日中の図書館より静かであることが分かった。騒音レベルは,CPUに負荷をかけても変化しないが,外気温を上げると騒音レベルも上昇することが確認できた。

 日中の騒々しいオフィスでは特に気にならなくても,深夜の静かなオフィスで仕事をしていて,部門で運用しているファイル・サーバーなどの動作音が耳についた経験はないだろうか。

 ここにきて,“静かさ”をウリにした静音型のPCサーバーに注目が集まりつつある。国内でいち早く静音型サーバーを製品化したNECは,「図書館や病院の事務所,個人事業主の税理士事務所などからの引き合いが多い。こうしたオフィスでは,専用のサーバー・ルームなど持っていないケースがほとんどで,机の脇にサーバーを置いている。そのため,サーバーの動作音が気になる」(クライアント・サーバ販売推進本部 マネージャー 本永実氏)と,その理由を説明する。

 NECでは,搭載可能なCPU数が最大1個のエントリ・サーバーの販売実績のうち,すでに1~2割は静音型サーバーが占めているという。本永氏は,「2004年12月に静音型サーバーの出荷を開始してから,ジワジワと知名度が向上し,それに伴い着実に市場に浸透してきた」と確かな手ごたえを感じている。

 NECは,静音型サーバーの騒音レベルの参考値を「30dB以下」と公表しているが,カタログ値を見ただけでは実感がわきにくい。そこで,実際に静音型サーバーを動作させて,従来型(非静音型)サーバーの動作音と比較してみた。

 その結果,OSを起動した直後の静音型サーバーの騒音レベルは30dBだった(騒音計測器とサーバーとの距離は50cm,室温は約25℃)。従来型サーバーの騒音レベルの39dBと比べ9dB低かった(図1)。

図1●静音型サーバーの騒音レベルは従来型サーバーよりも9dB低い
図1●静音型サーバーの騒音レベルは従来型サーバーよりも9dB低い
静音型サーバーは,人が誰もいない深夜の会議室には及ばないものの,日中の図書館より静かだった。サーバーの騒音レベルは無響室で計測。オフィス内や屋外の騒音レベルはハンディ型の騒音計で計測した
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 日中のオフィス(53dB)で静音型サーバーを動作させると,数十cmの距離まで顔を近づけない限り動作音は聞こえない。オフィスの中や屋外の騒音レベルと比較してみると,深夜の会議室(28dB)には及ばなかったものの,日中の図書館(36dB)よりは静かだった。

 今回,騒音レベルを計測した機種は,2006年7月に出荷開始したNEC製の静音型サーバー「Express5800 110Gb-c」(図2)。SOHOや企業の部門単位での利用を想定したタワー型のエントリ・サーバーである。CPUに水冷ユニットを装着することで騒音レベルを低く抑えている。比較対象として,従来型サーバー「Express5800 110Gc」を用意した。

図2●騒音レベルを計測したサーバー2機種
図2●騒音レベルを計測したサーバー2機種
SOHOや中小企業などでの利用を想定したNECのタワー型サーバー。搭載可能なCPU数は最大1個
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 騒音レベルは,サーバーの状態や外気温など,条件を変化させて計測した。(1)Windows Server 2003を起動してディスク・アクセスが安定した直後と,(2)CPUに負荷を20分間かけた後,(3)室温を25℃から29℃に変化させた後──の3点である。

 一般に,人が誰もいない深夜の静かな会議室でも30dB弱の騒音が計測される(これを暗騒音と呼ぶ)。会社の会議室などでは,この暗騒音がノイズとなり,サーバーの正確な騒音レベルを計測するのは難しい。そこで,東京都立産業技術研究センターの協力を得て,暗騒音が低い無響室の中で実験を行った。実験条件の詳細は以下を参照してほしい。

無響室で騒音レベルを計測
写真A●東京都立産業技術研究センターの無響室
写真A●東京都立産業技術研究センターの無響室
音レベルを計測した無響室の内部(写真左)と,計測作業を担当した神田浩一氏(光音グループ 音波・音響機器研究室 主任研究員)

 サーバーの騒音レベルは,東京都立産業技術研究センター(http://www.iri-tokyo.jp/)が所有する無響室で計測した。無響室は,壁が二重構造になっており,外部からの音の侵入を防いでいる。内装は,くさび状のグラスウールで覆われており,計測室内で発生した音の反射を抑える(写真A)。計測時の暗騒音(音源を入れていないときの騒音レベル)は13dB。

 サーバー本体の振動の影響を抑えるため,防振ゴムを敷いた台の上にサーバーを設置。騒音計は,サーバーの正面パネルの中央部分から水平方向に50cm離した場所に固定した。騒音レベルは,1分間の平均値を求めたほか,20分間連続した計測も行った。 利用した無響室には,室温を制御する機能がない。当日の室温は25℃±1℃以内。室温を上げる実験では電気ヒーターを別途用意して29℃まで温度を上げた。計測作業は,同研究センターの神田浩一氏(光音グループ 音波・音響機器研究室 主任研究員)が担当した。