総務省が,今年5月時点における国内のインターネット・トラフィックの試算・集計結果を公表した。総トラフィックは同月平均で721.7Gビット/秒で,来年5月には1T(テラ)ビット/秒に達する見込みだ。その背景には,動画の視聴機会が急激に増えている事情があるようだ。

 この試算・集計作業は2004年9月に開始し,同11月から半年ごとに実施している(図1)。インターネット・トラフィックの総量は,測定開始当初の2.68倍に膨れ上がっている。

図1●インターネット・トラフィック総量の推移
図1●インターネット・トラフィック総量の推移
総務省では来年5月に1T(テラ)bpsに達すると見ている。数値は月平均。

 ここでいうインターネット・トラフィックの総量とは,ISPのバックボーンとエンドユーザーの間の総トラフィックである(図2)。算出方法はこうだ。日本国内の主要IXは総トラフィックを公表しており,今年5月は合計167Gビット/秒。その上で国内のISP6社の協力を得て,それぞれのバックボーンからIXへ流れ込むトラフィックを集計する。結果は70.8Gビット/秒で,主要IXの総トラフィックの42.4%を占める。その一方で,ISP6社のバックボーンから,それぞれのISPと契約するすべてのブロードバンド・ユーザーへ流れるトラフィックは306Gビット/秒だった。そこで,この値が42.4%にあたる全体量を求めて721.7Gビット/秒と算出した。

図2●インターネットのトラフィックの算出方法
図2●インターネットのトラフィックの算出方法

一般化し始めた動画視聴が一因に

 こうしたトラフィック増の背景には,FTTHの普及でユーザー回線が広帯域化していることに加え,大容量コンテンツの増加があると見られる。総務省電気通信事業部データ通信課の高村信課長補佐は,「測定開始当初はピークと底の差は1.5倍だったが,今は2倍だ。おそらく,ユーザーが動画を見ているからだろう」と指摘する。

 昨年11月からは,国外ISPから協力ISPに流入するトラフィック増が顕著になっている。今年5月は116.4Gビット/秒。昨年5月の約1.7倍だという。昨年11月という時期は,「メディアが米グーグルのYouTubeを取り上げだしたころに一致する」(高村課長補佐)。

 また,トラフィック増につながる新しい要因として,高速CPUを持つゲーム機によるオンライン・ゲームが浮上してくる可能性があるという。回線の高速化とコンテンツの大容量化は,相互連鎖して加速する。トラフィック増はまだ続きそうだ。