日本ヒューレット・パッカード 池田 拓也


 今回は,仮想マシンのバックアップとリストアについて説明しよう。バックアップといっても単純なファイルのコピーから,ストレージの機能を使用した企業規模のソリューションまで,方法は無数にある。ここでは最も一般的な方法と思われるバックアップ・ソフトウエアを使用し,ネットワークを介した方法を紹介する。また,「VMware ESX Server 3.0」の新機能である「VMware Consolidated Backup」についても説明する。VMware Consolidated BackupはSANストレージとスナップショットを利用した新しい仮想マシンのバックアップ・ソリューションである。これを使うとネットワークに負荷をかけずに仮想マシンのバックアップが可能だ。

 ここで例に挙げる環境は図1の通りである。VMware ESX Serverとは別に,ネットワーク上に独立したバックアップ・サーバーを用意した。VMware ESX Server 3.0に使用できるバックアップ・ソフトウエアは,VMwareのWebサイトに「Backup Software Compatibility for ESX Server 3.0」として公開されている。このドキュメントには,VMwareがテストし,動作を確認したバックアップ・ソフトウエアが列挙されている。バックアップ・ソフトウエアを選択する際には,必ず確認したい。

図1●ここで説明するテスト環境
図1●ここで説明するテスト環境
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 また,バックアップ・ソフトウエア・ベンダーのサポート情報も確認が必要だ。これは,VMwareではバックアップ・ソフトウエア独自の機能やオプションまではテストしていないからだ。

 ここではバックアップ・ソフトウエアに,Symantec Backup Exec 10dを使った。

ファイル単位でバックアップ

 仮想マシン環境を,ネットワークを介してバックアップするには,大きく分けて2つの方法がある。そのうちの1つ目は,それぞれの仮想マシンにバックアップ・ソフトウエアのエージェントをインストールして,仮想マシン上のファイル単位でバックアップする方法だ。物理環境と全く同じ方法なので,これまで物理環境で行っていたバックアップ操作を変更する必要がない。

 例えばVMware ESX Server「ESX02」上の仮想マシン「cluster-vm01」にエージェントをインストールして,バックアップ・サーバーにインストールしたバックアップ・ソフトウエアから見た様子が図2である。後は,バックアップ・サーバーからバックアップ対象ファイルを選択してバックアップする。

図2●仮想マシン上のバックアップ対象ファイルを選択する
図2●仮想マシン上のバックアップ対象ファイルを選択する
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 この方法の利点は次の通りだ。

●ファイル単位でバックアップできる

●仮想マシンを停止する必要がない

● フル・バックアップのほか,差分・増分バックアップも可能

●別サーバーへのリストアが容易

 ただし,この方法では仮想マシン全体をバックアップするのが難しい。また,物理環境と同じ方法ということは,仮想化環境であることのメリットはあまり感じられない。バックアップ用途としてはアプリケーションのデータなど,日々更新されるデータのバックアップに向いている。

仮想マシンを丸ごとバックアップ

 もう1つの方法は,VMware ESX Server上の仮想マシンの実体がファイルであることを利用して,仮想マシンを構成するファイルをまとめてバックアップするという,仮想環境特有の方法である。この方法ではVMware ESX Serverのサービス・コンソールにエージェントをインストールする必要がある。VMware ESX Server 3.0のサービス・コンソールはRed Hat Enterprise Linux 3を基に作られているので,サービス・コンソールにはLinux対応のエージェントをインストールする。

 VMware ESX Server「ESX02」のサービス・コンソールにエージェントをインストールしてバックアップ・ソフトウエアから見ると図3のようになる。VMware ESX Server 3.0では仮想マシンごとに1つのディレクトリが作成され,その中に仮想マシンを構成するすべてのファイルが保存される。ファイルには,仮想ディスク・イメージである.vmdkファイルや,仮想マシンの設定情報が保存されている.vmxファイル,仮想マシンのログ・ファイルなどがある。例えば仮想マシン「cluster-vm01」を丸ごとバックアップする場合は,「cluster-vm01」ディレクトリ内のすべてのファイルをバックアップする。バックアップ時には仮想マシンを停止するか,一時停止(サスペンド)する必要がある。

図3●仮想マシン構成ファイルを直接選択する
図3●仮想マシン構成ファイルを直接選択する
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 この方法では仮想マシンを丸ごとバックアップできるので,災害復旧(ディザスタ・リカバリ)用途にも向いている。また,仮想マシンの新規作成時や構成変更時にバックアップしておけば,仮想マシンのテンプレートとしても利用できる。

 ただし,仮想マシン上のファイル単位ではバックアップできないため,アプリケーション・データのバックアップには向いていない。また,バックアップ対象が仮想マシン全体のため,バックアップ容量が大きくなる点に注意が必要である。

 リストアするには,まずバックアップしたファイルを元のフォルダに戻し,次に仮想マシンをVMware ESX Serverに再登録する。VirtualCenterを使って再登録する具体的な手順は次の通りだ。

 VMware ESX Serverの「Configuration」タブの「Storage(SCSI,SAN and NFS)」画面を開く。そして,ファイルを戻したい仮想マシンのデータが含まれるDatastoreをダブルクリックし,Datastore Browserを起動する。続いて仮想マシン構成ファイルの中にある.vmxファイルを右クリックし,「Add to Inventory」をクリックする。すると「Add to Inventory Wizard」が起動するので,それに従って仮想マシンを登録する場所を指定する。

 以上の2つの方法は,どちらもネットワーク経由でバックアップするため,バックアップ時のネットワーク負荷が,VMware ESX Serverのパフォーマンスに影響を与えることが問題となることがある。特に仮想マシン単位でバックアップすると,バックアップ容量が大きくなりがちなので注意が必要である。