日本ヒューレット・パッカード 池田 拓也


 前回は仮想マシンの作成方法について解説した。その中で,仮想マシンに仮想ネットワーク・インターフェース・カード(NIC)を構築する方法に触れた。ここでは,その仮想NICを使用して仮想マシン間や外部ネットワークに接続する方法について説明する。VMware ESX Serverの仮想ネットワークは,物理ネットワークよりも,構成や設定を簡単に変更できる。さらに,VLANやチーミングにも対応している。

仮想スイッチを持つ

 まずは,VMware ESX Serverのネットワークの仕組みから説明しよう。VMware ESX Serverでは,サーバー内に仮想スイッチを作成する。仮想マシンは仮想スイッチを介して,ほかの仮想マシンや外部ネットワークに接続する。

 仮想スイッチには,それに接続する物理NICを設定できる。仮想マシンを外部ネットワークに接続するには,物理NICが接続された仮想スイッチに仮想マシンを接続することになる。

 逆にVMware ESX Server内の仮想マシンのみでローカル・ネットワークを構成する場合は,仮想スイッチに物理NICを接続しなければよい。VMware ESX Serverでは,1台のホスト上に最大248個の仮想スイッチを作れる。VMware ESX Serverのネットワーク・システムは図1のようになる。

図1●VMware ESX Serverのネットワーク・アーキテクチャ
図1●VMware ESX Serverのネットワーク・アーキテクチャ
[画像のクリックで拡大表示]

 仮想スイッチに接続されるのは仮想マシンだけではない。VMware ESX Server 3.0では,サービス・コンソールを含めたVMware ESX Serverに関連するすべてのネットワーク接続が仮想スイッチにつながる。そのため,1枚の物理NICがあればVMware ESX Serverをインストールできるようになった。以前のバージョンのデフォルトの設定では,サービス・コンソールが1つの物理NICを占有してしまい,仮想マシン用の物理NICと合わせて最低2枚の物理NICが必要だった。

 サービス・コンソール以外には,VMkernelもネットワーク接続のために仮想スイッチを使用する。これはVMotionやiSCSIストレージ,NFSボリュームに接続する際に使用される。

 VMware ESX Server 3.0のネットワークに関する設定とは,仮想スイッチとポート・グループの構成である。ポート・グループは,仮想スイッチに作られた設定が共通なポートの集合体である。

 それぞれのポート・グループは1台のVMware ESX Server内で重複しない(ユニークな)ネットワーク・ラベルを持ち,これがVMware ESX Serverでのネットワークの単位となる。1つの仮想スイッチに複数のポート・グループを作れる。

仮想スイッチの作成方法

 では,実際にネットワークに関して設定してみよう。ここでは,新たに仮想マシン用のポート・グループと,それを割り当てる仮想スイッチを作成する。

 ネットワークに関して設定するには,VirtualCenterで設定対象となるVMware ESX Serverの「Configuration」タブにある「Networking」メニューを利用する。VI Clientで直接VMware ESX Serverに接続しても同じように設定できる。

 デフォルト設定でVMware ESX Serverをインストールした直後の状態では,サービス・コンソール用のポート・グループと仮想マシン用のポート・グループの両方を割り当てた仮想スイッチが1つ作られているはずである。

 ポート・グループと仮想スイッチを作るには,画面右上の「Add Networking」ボタンをクリックすると起動する「Add Networkウィザード」を使う。まずは,「Connection Type」を選択する。仮想スイッチに接続するのは仮想マシンだけではないことは先に述べた。「Connection Type」画面では,仮想スイッチに作成されるポート・グループに接続する対象を,以下の3つから選択する。

(1) Virtual Machine:仮想マシンを接続するポートを作成する。仮想マシン間の接続,また仮想マシンと外部ネットワークとの接続に使用する。
(2) VMkernel:VMkernelが使用するポートを作成する。VMotionやiSCSI,NFSボリュームへの接続に使用する。
(3) サービス・コンソール:サービス・コンソールが使用するポートを作成する。

 ここでは仮想マシンが接続するポート・グループを作成するので,「Virtual Machine」を選択する。