システムを構築・運用する際に,インターネットで公開されている数々のオープンソース・ソフトを利用することは今や珍しくない。Webシステムの構築では,OSの「Linux」,Webサーバー・ソフトの「Apache」,データベース管理システムの「MySQL」,スクリプト言語の「PHP」といった定番ソフトが使われる。それぞれの頭文字を取って「LAMP」と呼ばれ,最近では企業の基幹システムで使われることさえある。

 実は,ネットワーク監視やシステム監視の領域でもLAMPに匹敵する,定番のオープンソース・ソフトがある。「Hobbit」や「Nagios」,「MRTG」などだ。これらのツールを使えば「サーバーの死活状況やリソースの使用率,サービスの稼働状況を監視し,障害時に管理者にメールで警告する」といったことを簡単に実現できる。

商用並みに高機能なツールも

 オープンソースの特徴は,ソースコードが公開されていること。ユーザーはソースコードを無償で入手して利用できる。スキルのあるユーザーなら,ソースコードに手を加えてカスタマイズすることもできる。

 そのソースコードは,世界中の技術者が共有し,ユーザーの声を反映した機能改良やバグ修正を進めている。定番ツールともなると機能改良の頻度はかなり高い。また,より使いやすいものにするための拡張ソフトが第三者によって開発,公開されていることも多い。ツールによっては,拡張ソフトを組み合わせて商用製品並みに高機能化することができる。この強力なソフトを使わない手はない。

 実際,多くのプロは,オープンソースの監視ツールを日常的に利用している。24時間365日の稼働が求められるミッション・クリティカルな現場に適用するケースも増えてきた。例えば,データセンターを運営するソフトバンクIDCは顧客向けのホスティング・サービスの監視に,楽天トラベルは宿泊予約サイトの監視にオープンソースを採用している。

 では,具体的にどのようなツールをどう使っているのか。なじみの薄いユーザーには分かりづらいかもしれない。そこで,ユーザー企業や通信事業者などの現場で活躍するプロに「定番」と言えるオススメ・ツールについて聞いてみた。例えば楽天トラベルは,トラフィック監視ツールのMRTGをサーバーの死活監視やプロセス監視にも活用している。「MRTGを使ってグラフ化した方が障害の状況を把握しやすくなる」(技術プロデュース本部第1システムプロデュース部システム管理課の廣田敏昭課長)という考えからだ。

 中には,オープンソースではないものの,頻繁に機能強化され,定番になっているフリーのツールもある。以下では,プロが愛用する定番ツールとその使いこなしのテクニックを紹介する。ネットワークやシステムの監視ツールに加え,セキュリティ対策に役立つぜい弱性検査ツール,そしてあまり知られていないフォレンジック用ツールの7種類を見ていく(図1)。

図1●ネットワークやシステムの監視,セキュリティ対策に役立つフリー・ツール
図1●ネットワークやシステムの監視,セキュリティ対策に役立つフリー・ツール
本特集ではユーザー企業や通信事業者,セキュリティ専門家に実際の活用例を聞いた。
[画像のクリックで拡大表示]

 定番ツールならもう知っているという読者は多いかもしれない。ただ,ツールは常に進化しており,使い方も個人によって特徴が出る。既に利用しているユーザーでも新たな発見や活用のヒントが見付かるはずだ。