秋山 進
ジュリアーニ・コンプライアンス・ジャパン
マネージングディレクター

 今回も前回に引き続き調査の進め方について説明していきます。

(2)状況を確認する

 前回お話ししたように、はじめに「人を見る」作業を行った後は、事件を取り巻く状況の確認を行います。その人に不正を行う動機になりそうなことがあるか。そして、この問題が影響を及ぼす範囲がどの程度の大きさになるかを見極めていく。つまり、現状で考えられる「仮説の仮説」を立てるわけです。

(3)トップの支援を得る

 調査を進める上でトップの支援を得ることはとても重要です。そこで担当者(コンプライアンス室長、内部監査室長)の方にぜひお願いしたいことがあります。毎週10分でいいので、必ずトップと会う時間を取って下さい。特別な用件がなくてもトップと毎週定期的に会うことを慣例にするのです。私はCEO補佐の仕事を長い間やってきたのでよくわかるのですが、トップはコンプライアンス室や内部監査室の人からいきなり「1時間ほど時間を下さい」と言われると、とても不機嫌になります。なぜなら、それは何かよからぬ問題が発生していることと同じ意味だからです。

 別の言い方をすると、こういった仕事の担当者は、下手をするとトップにとって「不快な存在」になってしまうのです。誰でも嫌な気持ちにさせられる人と会うのは避けたいものです。ですから、何か問題が発生したときだけトップに会いに行くのではなく、常日頃から顔を合わせる機会をつくって「今週はこんなことがありました」と、問題解決などポジティブなものも含めて、こまめに報告を行うことが大切です。

 また、問題の発生したときだけ報告する形だと、全容がわかるようにプレゼンしろと求められます。しかし、それは非常に難しいのです。不正の全容など最後まで(最後になっても)わからないことのほうが多いからです。それでもトップは無理を承知で「わかりやすく報告しろ」と言うでしょう。トップとしては問題が発生していると耳にした段階で、すぐにすべてを解決してしまいたいからです。

 このように、コンプラ担当者がトップから見て不快な存在になってしまい、その結果としてトップに情報を上げる前にいろいろ分析して時間を費やすような事態は、絶対にさけなければなりません。そのためにもいつでも会える関係を構築しておかなくてはならないのです。