Q: 「できない人」や「やらない人」を差別してしまい,仕事の効率化が図れません。

「まじめ」の一言になるかと思うが,仕事の進め方でやるべきことができない人や,やらない人を差別してしまい,仕事の効率化が図れない。
(インフラ関連のSE/男性・30歳代)

A: 悩んでいる自分自身に誇りを持て

 私も日々あなたのような体験をしていますので,ご苦労はよく分かります。

 あなたの悩みは正常で,しかもあなたの会社の経営者にとっても,このような事態への対応は「現場力向上」の観点で大事なことなのです。

 従って,このような悩みを持つあなたは自分に誇りを持つべきです。まずは,ここが出発点です。あなた自身がこのようなことでやる気をなくしては,自分にとっても会社にとっても大損失なのです。

 次に,現実的な対処法を構造的に分析してみましょう。

 図1をご覧ください。人間を「やる気」と「能力」の2軸で分類すると,(1)やる気も能力もない人(ダメ人間),(2)やる気はないが能力はある人(潜在的有望株),(3)やる気はあるが能力のない人(カラ回り人間),(4)やる気も能力もある人(スター)の4種類に分けられます。なお,ここで言う能力とは,仕事ができるかどうかを指しており,生まれついた「資質」とは異なります。

図1●「やる気」と「能力」による分類
図1●「やる気」と「能力」による分類

 まずは,あなたのそばにいる人々を,これで分類してみてください。「やる気」も「能力」も仕事の種類によっても異なりますから,まずはあなたが直面している仕事を対象にするのが分かりやすいでしょう。あなたは,この分類で「スター」です。そして,あなたの悩みは「ダメ人間と組まされてしまった時の対処法が分からない」ということになります。

 では,あなたが取り得る行動オプションを整理しましょう。過激な順番に,(a)上司に相談して代えてもらう,(b)本人に正直に話してやる気を出してもらう,(c)無視する,(d)他のスターを味方にして本人がいなくても黙々と仕事を進める,(e)丁寧に指導して教えてあげる――あたりでしょうか。

 私は,やる気も能力もない人(ダメ人間)には,まず(a)の行動を取ります。少なくとも上司や周囲に自分の悩みを正直に言っておかないと,結果的に仕事がダメだった場合に自分にも大きな責任がかかるからです。

 それにあなたの仕事が効率的ではないということは,仕事全体としても大問題なのですから,会社として憂慮すべき事態であることを上司にきっちり説明すべきです。

 次の選択肢は(d)です。とにかく目前の仕事をこなさなければならないのですから,これは一番現実的な対応と言えます。

 ただし,本人があなたの部下で,あなたに「育成責任」がある場合には,(b)や(e)を選択します。これは「上司の税金」ですから仕方ありません。この辺のあきらめも必要なのです。

 先日,私の部下が同僚に対して「この人とはやってられない」と言ってきました。話しを聞くと,問題の同僚は典型的な「カラ回り人間」ですが,カラ回りし過ぎて「ダメ人間」に陥る寸前のようでした。

 私は山本五十六元帥(連合艦隊司令長官)の「やってみせ,言ってきかせて,させてみせ,ほめてやらねば,人は動かじ」を例に出し,その部下がどこまで実行したのかを問いました。すると「させてみせ」しかやっていないことが分かったのです。その部下は早速「やってみせ,言ってきかせて」ほめました。すると仕事の要領を教えてもらったその同僚は,見違えるように仕事をし始めたのです。

Q: 協力会社の要員のレベルが低くて悩んでいます。

協力会社の要員に,スキル・やる気・常識のことごとく低い人が多い。お客様単金が低い常駐型作業のため単金レベルの低い人しか募集できないという理由があるのかもしれないが,それでも「事務派遣の人を雇ったほうがましでは?」と思うようなレベルの要員が「技術者」の単金を要求してくる。「仕事のできる人と仕事がしたい。こんなバカ者たちの相手を毎日したくない」というのが悩み。
(SE/女性・42歳)

A: 「カラ回り人間」と「潜在的有望株」を見つけて,じっくり話し込め

 これは,協力会社の要員が,「ダメ人間」のケースですね。

 しかもあなたの場合,本来自分は「スター」なのに,この状況のせいでやる気が低下し「潜在的有望株」に陥りそうになっていると拝見します。

 このような環境がいやで転職する方もいますが,私はそれは勧めません。なぜなら次の職場でも同様なことが発生する可能性が高いからです。

 まずは,あなた自身のプライドを保持するところから始めるべきです。あなたの悩みは,単に自分自身の悩みではなく,会社全体にも影響する重要なことなのです。それを認識するとともに,「スター」としての自覚を持つべきです。

 次に,それらの協力会社の要員が本当に「ダメ人間」なのかをじっくり観察しましょう。

 たぶん,すべての人が「ダメ人間」ではないと思います。「カラ回り人間」や「潜在的有望株」がいたら,じっくり話し込んで,仕事の要領を教えてあげたり,やる気を出させてあげたりするのが「大人の対応」です。

 しかし,それができない場合は,あなたの取り得る行動オプションは限られてきます。

 最初に取るべき行動オプションは,「上司に事態を報告して協力会社の要員を代えてもらう」。難しいかもしれませんが,結果としてその仕事が不調になった場合,責任はあなたの上司にあるわけですから,正々堂々と繰り返し主張すべきです。上司が対応してくれない場合は,さらにその上の上司に相談することも考えるべきでしょう。

 併せて,「他のスターを味方にして黙々と仕事を進める」という行動オプションを取ることが現実的でしょう。とにかく,実績を上げていなければ,上司に文句を言っても説得力に欠けます。「こいつがこれほど言うのならかなり深刻だな」と上司に思わせるのです。ここまでやってダメなら,転職もしかたないかもしれません。