携帯電話機を使ったモバイルコマースやFeliCa決済,コンテンツ販売などモバイルビジネスの市場が急拡大しつつある。放送事業者も放送事業外収入の拡大の一環で,携帯電話機を用いた通販ビジネスの拡大に力を入れている。日経ニューメディアが9月24日に開催したセミナー「成長期に突入したモバイルビジネス」におけるTBSの講演を参考にしながら今回は,放送事業者のモバイルビジネスに関する取り組みを紹介する。

 携帯電話の機能の中で通信と放送が最も融合した例が,携帯端末向け地上デジタル放送「ワンセグ」である。ワンセグチューナーを搭載した機種は稼働ベースでみても,三大キャリアの合計で1000万台に迫ろうとしている。トップのKDDI(au)は,2007年8月末で約528万台の稼働数を誇る。2007年10月1日には函館市や旭川市、帯広市など北海道の大半の地域でも地上デジタル放送が始まる。いまやワンセグの受信エリアは、全世帯の8割にも達している。

 こうした状況を受けてTBSは,自社のテレビ番組と連動した携帯電話向けの通販サービスを積極的に展開している。TBSグループでは,固定テレビ向け地上デジタル放送(12セグメント放送)やワンセグ、BSデジタル放送(BS-i)などでテレビ放送と連動した通販サービスを提供しており,トマデジはBMLのオーサリングから画面制作までを行っている。筆者としては,Webサイト上のコンテンツ販売サービス「TBS BooBoBox」にも注目している。

 そしてTBSグループ全体の事業として収益性が期待できるサービスとして,「通販」が主要な柱に育ってきている。TBSはグループだけで,自社のバイヤーによる品ぞろえや受発注、課金、配送といった通販ビジネスに必要なすべての業務に対応するプラットフォームを構築している。


今年中に4兆円,活況を呈する日本の通販市場

商品が購入できるTBSの地上デジタルデータ放送の画面
写真1●商品が購入できるTBSの地上デジタルデータ放送の画面
[画像のクリックで拡大表示]

 日本の通販市場は,2007年中に4兆円に達するという見方があるほど活況を呈している。決済手段もパソコン上のクレジットカード決済やFeliCa機能を使った決済など,様々な手段が可能になっている。こうしたなかTBSは新しい試みとして,視聴者が地上デジタル放送のデータ放送を通じて商品を購入できる仕組みを実現し,テレビ番組とeコマースを今後の「通販ビジネス」の重要な手段として位置付けている(写真1)。


データ放送画面の番組紹介コーナーでは,現在放送されている番組の詳細を知ることができる
写真2●データ放送画面の番組紹介コーナーでは,現在放送されている番組の詳細を知ることができる
(写真は「王様のブランチ」の場合)
[画像のクリックで拡大表示]

 その典型的な事例が,毎週土曜日の昼に放送している「王様のブランチ」で実施されている「テレビ番組関連のインターネット通販」である(写真2)。番組内で紹介した関連アイテムや本,DVDなどを,リモコンを操作してデータ放送の画面から購入できる仕組みが提供されている。ただし,テレビがLAN回線などの上り回線に接続されているケースがまだ少ないためTBSは,ワンセグをキラーソリューションと考えている。例えばワンセグと連動した番組で「華麗なる一族」や「世界遺産」といった番組を収めたDVD(世界遺産ではブルーレイディスク版もある)を番組終了時に紹介し、データ放送で視聴者を購入サイトに誘導するといった「T(テレビ)コマース」的な取り組みを行ってきた。