写真1●マルチメディア放送ビジネスフォーラムの情報交換部会
写真1●マルチメディア放送ビジネスフォーラムの情報交換部会
デジラルラジオニュービジネスフォーラムの第3期に当たるが,名称を変更して開催。
 デジタルラジオの3セグメント放送を推進する「マルチメディア放送ビジネスフォーラム」(旧デジラルラジオニュービジネスフォーラム)は,9月13日に第3期の第1回情報交換部会を開催した(写真1)。

 今回の要点は,フォーラム名称の変更報告と,提案するマルチメディア放送像の紹介である。地上アナログテレビが放送終了となる2011年7月以降のビジネス化に向けたフォーラムの活動についてレポートする。

 このフォーラムは,3セグメント放送を推進するエフエム東京(以降,TOKYO FM)を中心に,放送局,受信機メーカ,自動車メーカ,コンテンツ関連会社,通信事業者などにより2005年6月に設立されたもの。3年目を迎える第3期では,2011年7月以降のビジネス化をになみ,フォーラム名称を「デジタルラジオニュービジネスフォーラム」から「マルチメディア放送ビジネスフォーラム」に変更した。

“3セグメント=マルチメディア放送”として名称を変更

 名称変更の理由についてフォーラム代表を務める杉山知之氏(デジタルハリウッド大学・大学院学長)は「“デジタルラジオニュービジネスフォーラム”の活動内容は,会員には理解されていても,一般には知られていない。“デジタルラジオ”自体の知名度がまだ低いことも一つの要因だ。今回,フォーラムの名称を“マルチメディア放送”に変えることで,一般の方々にもフォーラムが目指す方向を理解していただけると考えている」と説明した。

 「マルチメディア」について杉山氏は「文字,音,グラフィックを,Anyone(誰でも),Anytime(いつでも),Anyware(どこでも)の“トリプルA”の環境で利用でき,それがInteractive(双方向性)をもつことが必要。これらの7つの要素が全て揃って初めて理想的なマルチメディアになる」と説明した。「デジタルラジオの3セグメントを利用した放送形態と持ち歩ける端末の組み合わは,この7つの要素をすべて兼ね備えている。つまり,デジタルラジオの3セグメント放送は,本格的なマルチメディアと捉えることができる」(杉山氏)。フォーラムの第3期の活動は,「3セグメント放送=マルチメディア放送としての成熟およびビジネス化」を中心に据えると活動への期待を語った。

フォーラムが提案するマルチメディア放送像

 今回の第1回情報交換部会で,フォーラムが提案する「マルチメディア放送像」について,フォーラム運用推進部会主査の仁平成彦氏(TOKYO FM 執行役員待遇デジタルラジオ事業本部副本部長)は次のように説明した(図1)。

図1●フォーラムが提案する「マルチメディア放送」像
図1●フォーラムが提案する「マルチメディア放送」像
マルチメディア放送ビジネスフォーラム第3期 第1回情報交換会資料「フォーラムが提案するマルチメディア像」を参考に著者が作成

 「マルチメディア放送受信機として「携帯型端末(携帯電話,PDA等)」,「PC・専用機」,「車載型受信機」,「TVやオーディオ製品などの従来の受信機」などが想定できる。一方,利用形態としては「コンテンツストリーミング(放送)」,楽曲・電子書籍・VideoClipなどの「コンテンツダウンロード」,地図情報や位置情報,PC向けのウィルス対策ソフトのアップデータなどを入手する「データダウンロード」の3つの放送形式が考えられる。これらを組み合わせることにより実現するサービスがマルチメディア放送である」(仁平氏)。受信機としてはデジタルラジオ対応の携帯電話に限られるが,既にTOKYO FMはこの3つの放送形態のサービスを実施している。

 また,マルチメディア放送で重要なサービスとして「1つ目が携帯端末以外の重要な受信機端末である“車向け放送サービス”,2つ目がコンテンツの有効利用に重要な“コンテンツダウンロード”,3つ目が機器の利便性向上のための“データダウンロード”,4つ目が地上放送の役割である“地上波を活かした地域の安心・安全情報の提供”がある」(仁平氏)と説明した。

 TOKYO FMでは,10月2日から開催される展示会「CEATEC JAPAN 2007」にブースを出展し,フォーラムの成果発表とデモンストレーションを行う予定である。

総務省の研究会・懇親会へフォーラム成果を提言

 第1回情報交換部会では,総務省 情報通信政策局 地上放送課課長の吉田博史氏の講演もあった。

 2011年7月の地上アナログ放送終了後に空くVHF帯/UHF帯跡地利用の検討は,総務大臣の諮問機関である情報通信審議会の「電波有効利用方策委員会」で6月に終了した。その結果,デジタルラジオを含むテレビジョン以外の「携帯端末向けマルチメディア放送」には,32.5MHzが割り当てられることになった。(「見えてきた周波数割り当て,2011年以降を見据えた取り組みが始まる」参照)。これを受ける形で「携帯端末向けマルチメディア放送サービス等の在り方に関する懇談会」が8月に始まり,以下のような検討課題を掲げている。

  1. 制度分野:免許主体,免許の単位などの免許の在り方など
  2. 技術分野:マルチメディア放送サービスに適用すべき技術方式など
  3. ビジネスモデル分野:具体的に想定されるビジネスモデルなど
  4. その他:国際競争力強化の観点から,我が国がイニシアチブを取るための課題。視聴者の観点からマルチメディア放送に何が期待されるかなど

 また,懇談会では「携帯端末向けマルチメディア放送サービス等」に関して,上記の各分野で今後検討が必要と思われる課題について提案募集が行われた。

 総務省の吉田氏は講演の中で,「募集を締め切った時点で,フォーラムを含む各社から60件を超える提案があった」と報告した。今後,10月から来年1月までに代表的な提案にヒアリングを行い,来年5月までに「携帯向けマルチメディア放送」の基本的な考え方を整理し大枠を決める予定としている。