KDDIやソフトバンクグループなど,ブロードバンド(高速大容量)回線サービスを提供する通信事業者7社は9月20日,FTTH(ファイバー・ツー・ザ・ホーム)サービスを提供するためのコストを大幅に削減する方法の検証に成功したと発表した。具体的には,現在NTT東西が敷設している,1本の光ファイバーを最大32ユーザーに分岐して提供する「シェアドアクセス方式」の加入者光回線を,1分岐回線単位で借りる方法を検証し,技術的に実現可能であることを確認した。

 NTT東西は,現在シェアドアクセス方式の光回線を他社に貸し出す場合,32分岐回線単位か,それらを4本に分けた8分岐回線単位でしか提供していない。このため借りる側の事業者としては,その回線がカバーする特定のエリアに一定数のユーザーを獲得しなければ,設備稼働率が上がらないという問題があり,FTTHサービスへの本格参入が遅れていた。

 1分岐単位でFTTH回線を借りられるようになれば,FTTHサービス市場に多数の通信事業者が参入できるようになり,競争によってサービス料金が低減するという。この技術検証に参加したKDDI,ソフトバンクグループ,アッカ・ネットワークス,イー・アクセス,TOKAI,ビック東海の7社は今後,NTT東西と,この方式による相互接続の導入に向けた協議を行いたいとしている。

 ソフトバンクやKDDIらが今回検証したのは,32分岐する光回線をまとめて収容する「光信号伝送(OLT)装置」を,複数の通信事業者が共用するという方法である。NTT東西の局舎内にあるOLT装置と中継網の間に,「VLANスイッチ」を設置することによって,契約ユーザー単位でOLT装置を共用する各事業者にデータを振り分けられるようにした。さらに,各ユーザーごとに最低保障帯域を設定することで,通信事業者同士が他社の通信品質に影響を与えずにOLT装置を共用することができるとした。こうした動きに対応して総務省は,今秋にも情報通信審議会に1分岐回線単位での接続料の設定について諮問する考えのようだ。

 この提案に対してNTT東西は,「OLT装置を共有すれば通信障害などの問題切り分けなどに支障が出る」,「各社が独自サービスを柔軟に開発しにくくなる」,「現状の設備が共用を前提としていないため,改修には莫大な費用がかかる」といった反論を掲げている。情通審での審議は,この反論を検証する作業が主題となるだろう。

 一方,NTTグループ全体として考えれば,「2010年度に3000万回線のFTTHユーザー獲得」という経営目標を達成するためには,他の通信事業者への回線貸し出し分も計算しておく必要がでてきている。すでにBフレッツはFTTH回線全体の7割近くの市場占有率(シェア)を握り,規制強化の対象となりかねないほどユーザーの集約が進んでいる。残り3年間でさらに2000万回線強を上乗せするには,他事業者の参入促進も選択肢に検討せざるを得ない状況とも言える。