伊藤忠テクノソリューションズ 代表取締役社長 奥田 陽一氏
伊藤忠テクノソリューションズ
代表取締役社長
奥田 陽一氏

 2006年10月1日に伊藤忠テクノサイエンスとCRCソリューションズの経営統合で誕生した新生CTCは、運用・保守ビジネス、システム開発、製品販売が「4対3対5」となる収益モデルを目指している。この3つのビジネスセグメントを相互にリンクさせ、コンサルティングから開発、運用・保守サポートまでITライフサイクル全般にわたってサービスを提供するためだ。

 経営統合の最大の狙いは、経営規模の拡大とSI力の強化にある。経営統合から半年間は特に社員意識の一体化を目指し、2007年4月1日に、社内の制度やルール、情報システムをすべて一本化。当初の予想より早く統合によるシナジーを発揮できた手応えを感じている。


ITに求められる3つのニーズ

 経営の根幹を担うITの重要性がますます高まりつつある。経営者のIT投資に対する意識調査(日本情報システム・ユーザー協会「企業IT 動向調査2007速報」)によると、社員1000人以上の企業で、2006年度は62%が前年度よりもIT投資を増やしていくと考えている。本格的にITに取り組む姿勢が鮮明に出ている。

 そうした中で、ユーザーが共通してITに求めているニーズは、大きく(1)内部統制/法的対応、(2)生産性向上/効率向上、(3)新ビジネスへの参入、の3つである。これらに対して、CTC自身の取り組みを説明する。

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 2008年4月以降の事業年度から日本版SOX法が施行され、多くの企業でいよいよ本格的な内部統制・法的対応が始まることになる。ここで大事なことは、経営層によるリスクの定義とリスクコントロールだ。

 2008年4月にまずはCTC単体での稼働を目指している次期基幹システム「Next.MI」では、内部統制に対応するため、例えばアクセスの痕跡が後でトレースできる仕組みなど、情報セキュリティ、ITガバナンスの強化などを実現させる。当社の中長期経営戦略を支える情報インフラで、営業支援情報・経営戦略情報のタイムリーで定期的な提供、決算の迅速化による経営スピードの向上を狙いとして、約30の基幹系システムを統合する。総額約60億円を投資する。

セキュリティと利便性を両立する情報インフラ

 2つめの「生産性向上/効率向上」にも力を注いでいる。顧客密着型サービスのさらなる品質向上を目的に、生産性向上・効率向上を目指す経営改革プロジェクトを進めてきた。その1つが、2005年1月に稼働したセキュリティと利便性を両立した情報インフラ「eWork@CTC」だ。職務スペースでのフリーアドレス制を導入するとともに、統合グループウエアやシンクライアント等を導入することで、セキュリティを確保しながら組織を超えたコラボレーションと業務の効率化を実現した。「eWork@CTC」に対する顧客企業からの見学が後を絶たない。このようなIT投資が注目されていることを表している良い例だ。

企業のITビジョンは経営トップが示す

 3つめの「新しいビジネスへの参入」では、新規事業への進出や企業の再編統合、M&A(企業の合併・買収)に追随できるITシステムの構築が欠かせない。企業が永続的に成長し続けるには、市場変化への対応スピードを高めることが条件となる。ビジネスオペレーションの基盤となるITシステムに対して経営者が求める要件は、“オペレーション変化に柔軟に対応できること”“基盤として信頼がおけること”、そして“技術動向に左右さないこと”の3点に集約される。

 ここでのポイントは「システムの統合」だ。従来のサイロ型ではなく統合型にシステムのアーキテクチャを変更し、その土台となるITインフラに共通的な要件、セキュリティや運用監視などを集中させる。これで全社にわたったリスク管理が実施できる。さらに、このインフラを意識させない仕組化を行うことで、市場動向に即した戦略的な業務アプリケーションの迅速な開発が可能となり、かつ、技術動向に左右されない運用が容易でコスト低減が可能なITシステムを構築できる。これを念頭においたのがCTCが提唱する独自コンセプト「Trusted Infrastructure」だ。

 しかし、IT導入、言い換えればIT投資の結果を左右するのはトップの関与次第ともいえる。企業活動におけるITの活用ビジョンをトップが明確に示し、CIOと共にトップダウンで実行しないとうまくいかない。トップは、企業経営にとって最重要なテーマとなっているコンプライアンスやセキュリティも視野に入れ、戦略的なITシステムのあり方を考え、実行していかなければならない。それが、高度にIT化が進んだビジネス環境におけるトップの責務である。