リヴァンプ 代表パートナー 澤田 貴司氏
リヴァンプ
代表パートナー
澤田 貴司氏

 私は1981年に伊藤忠商事に入社し、11年間、化学品の分野で物流の世界を学んだ。その後、リテール戦略室で、セブン-イレブン・ジャパンの事業の支援をした。

 商社は大量に物を売買する世界だが、イトーヨーカ堂やセブン-イレブンは100円、200円単位の物をこつこつ売っている。しかも驚いたことに、商社はいくらもうかるのかという議論が先行するが、ヨーカ堂グループの議論はいつも「顧客のためになっているのか」が出発点であった。それまでとは全く違う価値観をたたき込まれた。

 またファーストリテイリングでは、柳井正氏に商売の原理原則、ビジョン、経営哲学の重要性など、多くのことを徹底的に教え込まれた。


支援先に資本参加して,逃げ場のない責任負う

 こうした経験から、よい会社がもっとよい会社になる再生の仕事をしてみたいと考え、キアコンという会社を立ち上げた。しかし、再生すべき会社をよくしたいという目的とは別に、投資家にリターンを返すという別な価値観も存在し、そこに違和感を感じるようになった。そこで、事業や人に向き合うことを決意し、キアコンをたたんでリヴァンプをつくった。

 リヴァンプをつくった思いは3つに集約される。1つは、企業を芯から活性化(revamp)し中長期の企業価値を向上させること。2つめは、仲間が一緒に実践することで、プロの倫理観と実行力を備えた経営者として育っていくこと。3つめは、これらを達成して社会に貢献することである。

 リヴァンプは、自ら経営に参画し、何らかの資本参加を行って経営責任を伴った支援を請け負っている。具体的には、経営チームを派遣し、一定期間経営権を取得または共有して業務にあたる。株式譲渡や新規出資により意思決定者・執行責任者として経営に参画し、逃げ場のない経営責任を負う。企業買収が目的ではないので、株式保有比率には柔軟に対応している。

 支援案件としては3つぐらいのステージに色分けできる。1つはスタートアップ支援。2つめは、いいブランドを持ちながら停滞している企業の再活性化。3つめは、債権カットなどの財務リストラを含むV字回復である。

12項目の価値基準を経営支援チームで共有

 経営再生の依頼を受けると、経営チームを派遣する。既存企業の中に突入していくからには、予期せぬハレーションが発生することもある。したがって、以下の12項目を守って仕事を進めることにしている。

  1. 企業が本質的に強くなることのみに全エネルギーを注ぎこむ
  2. すべての状況においてチームプレーに徹する
  3. 常に現場の社員が主役であって、リヴァンプは現場の活性化を全力でバックアップする
  4. 業界・現場を熟知した方に敬意を表し、商売の本質を深く徹底的に理解する
  5. 事実=現場・顧客=数値をベースにすべての問題解決を推進する
  6. 顧客志向と顧客価値の最大化へコミットする
  7. 早く大胆に進めることと慎重に進めることの適切なバランスを常に追求する
  8. 不正、お偉いさん思考、官僚的・表面的な思考・行動は徹底的に排除する
  9. 常に謙虚で、未来のために変化し続ける
  10. 最強のチームを組むことに決して妥協しない
  11. 誰の傘の下にも入らず、自由かつ機動的であり続ける
  12. 常に元気で、明るく、楽しく、メリハリをもって仕事に取り組む

 一人ひとりにこの12項目を理解してもらい、この思いで会社を再生していこうと仕事を進めている。

事業再生の資質とは人間力と技と体験

 再生に向けたアプローチには、2つの大きな切り口がある。1つは、企業と顧客との接点である。例えばロッテリアでは、100人ぐらいの顧客から徹底的に話を聞いた。

 2つめは、現場で働く人たちが本部に対してどう思っているか。本部の体制、本部と店舗の関係、これがきちんと回っているか、ビジョンが明確になっているか、企業文化はどうなのか、規律はどうなのか、オペレーション力・実行力はどうか、人材は備わっているか。これら2つをきっちり検証して、再生計画をつくっていく。

 トークツという靴の卸問屋の場合は、負の遺産整理から始まった。ブランドやチャネル、サプライヤー、工場の絞り込みなど、選択と集中を行った。その上で、ITインフラの構築や組織の再構築などを行った。その結果、収益力の劇的向上につながった。

 再生プロジェクトを進める際には、明確な進め方のイメージとマイルストーンが必要である。リヴァンプでは、事業再生を進める経営者に求められる資質を次のように考えている。

 すべての状況を正しく把握し、適切な判断を迅速に下し、実行し、結果に結びつける人間。まず、事を成し遂げようとする意思の力、自身に任された任務に対する責任感、決して間違ったことを容認しない正義感、相手のことを本当に理解できる心、こういう人間力が非常に重要である。

 次に技、スキルがある。商売の本質を理解する力、数値に置き換える力、課題解決を具体的にイメージできる力、それを伝える力、あるいは特定領域に非常に強いことである。

 そして、3番めが強烈な体験。特に失敗をして理解して、二度と繰り返さない、仕組み化するというような力を持っていることだ。「人間力(心)×スキル(技)×強烈な体験(体)」が、非常に重要だと思っている。

 最後に、経営者・リーダーが忘れてならないのは、夢を持って今を思いきり大事にすることである。