沖電気工業 代表取締役社長 篠塚 勝正氏
沖電気工業
代表取締役社長
篠塚 勝正氏

 ネットワークの進展によりユビキタス社会が拡大し、社会構造や利用者の意識が転換している。ユビキタスサービスがビジネス拡大に舵を切り、新たなビジネスプラットフォームとなるだろう。このとき、ユビキタスサービス進展の鍵を握るのは、パーソナル化、モビリティ拡大、セキュリティの3つである。


ユビキタスサービスを進展させる3つの鍵

 パーソナル化は、購入履歴や閲覧履歴といったハードプロファイルによるリコメンデーション、興味や関心、生活スタイルなどのソフトウエアプロファイルによるリコメンデーション、ソフトウエアプロファイルによる適応サービスの合成など、個の活動に合ったかたちで進展している。

 モビリティ拡大は、加入者数や機能競争など規模的な拡大から、グローバル競争やサービス競争へという質的な拡大、さらにオープン型プラットフォームに代表される構造的な変革が既に起こり始め、今後ますます進展していく。

 セキュリティでは、パーソナライズされた情報、コンテンツ、モビリティ環境における対応が欠かせない。2005年度と06年度との比較でも、Web/Net経由による情報漏洩の被害の割合が3倍以上に達するなど大きな変化があり、ネットを介した脅威の拡大への対応が重要となる。

ユビキタスサービスを実現するアーキテクチャ

 ユビキタスサービスの実現を目指す当社のアーキテクチャは、NGNなどのネットワークで構成されるユビキタスネットワークをベースとして、上位にユビキタスサービスを提供するための共通でオープンなプラットフォームがあり、その上位で金融、旅客、製造など個別化されたユビキタスサービスを実現している。利用されるユビキタス端末はさまざまな形態でプラットフォームとして提供される。

[画像のクリックで拡大表示]

 ビジネスプラットフォームとしての現行のネットワークは、セキュリティ、信頼性、サービス品質などに問題があり、特にインターネットやWebへの対応には大きな課題がある。一方、各企業向けのクローズドなネットワークは、用途によって分断化されており、相互連携が難しい、サービスのポータビリティやモビリティがない、などの課題を抱えている。

 そこで、NGNが期待される。NGNによってサービスがネットワークから直接提供されるとともに、そのベースにあるリッチなユーザーインターフェースや高信頼性、サービス連携の機能が付加価値として提供される。インターネット、Web 2.0などの手軽さや、既存のネットワーク型のサービスを上手に利用しつつ、NGNが持つメリットを最大限に活用する。このネットワークこそ、当社の目指すユビキタスサービスのベースであり、今後大きく広がるであろうと考えている。

e社会実現を目指すOKIの戦略

 当社は、ユビキタス社会のフロントランナーとして情報通信戦略を先駆けて推進してきた。今後、e社会におけるパーソナル化、モビリティ、セキュリティの3つの軸をプラットフォーム化し、その上で個別化されたユビキタスサービスを提供する。この基本的な考え方のもとに、ユビキタスネットワークへの取り組みでは、モバイルをベースとしたオンライン・ビジネス・プラットフォームの実現を目指し、通信を意識せず手軽にユビキタスサービスが利用できるネットワーク環境を構築する。

 セキュリティへの取り組みでは、セキュア無線を第1ステップとし、セキュアモバイル、さらには場面に応じてセキュリティレベルを変えるコンテキスト・アウェアネス・セキュリティへと発展させていき、モビリティとセキュリティのバランスがとれた安心・安全なビジネスプラットフォームとしたい。

 金融、公共、トラベル、交通、製造、ホーム&パーソナルなど社会生活のあらゆる場面で、そのとき、その場所にあった最適なサービスを利用者の手元に届けるユビキタスサービスを提供する。金融サービスでは、バーチャル店舗など顧客のライフスタイルに合わせたサービスを、またトラベルサービスでは、旅行の計画時から予約、旅行中までをワンストップでサポートするサービスを既に提供している。

 交通サービスでは、ETCに使われている無線技術を用い、駐車場やコンビニエンスストア、ガソリンスタンドなどの決済処理を始め多様なITSアプリケーションを提供していく。家庭や個人向けサービスでは、次世代携帯電話のIMSソリューションや情報家電との連携などにより、いつでもどこでもマルチメディア・コンテンツ・サービスを提供していく。