セブン&アイ・ホールディングス 執行役員システム企画部CVSシステムシニアオフィサー 佐藤 政行氏 |
第6次総合情報システムの特徴は、セブン-イレブン・ジャパンが従来から進めている単品管理をより強化していることだ。具体的には、単品管理の流れをシームレスに支援し、売場での商品情報や発注、品ぞろえに必要な情報をリンクして提供している。店舗は現状分析を行い、明日の天気や店舗周辺の催事情報を収集し、発注担当者間で情報を共有して仮説を立て、発注や品ぞろえを行う。その結果をPOSで検証する。それが単品管理の流れだ。
第5次までのシステムはネットワークや機器のリソースに限界があり、個々のプロセスごとにサポートしていた。しかし、第6次総合情報システムでは各プロセス間をシームレスにつなぎ、単品管理の流れに沿って仕事ができることを目的とした。
最初はネットワークの再構築だ。このネットワークは、セブン&アイグループの統合ネットワークとして位置づけられ、事業インフラの強化につなげている。本部ビル内部についてはデータ系と音声系を統合したIPネットワークを導入し、セブン-イレブンの店舗については、2004年11月から05年6月にかけて統合IPネットワークを順次導入した。
従来、POSデータの集配信はISDN回線を利用し、店舗に対するマルチメディア・コンテンツ・データの配信は衛星回線を、またセブン銀行のATMネットワークにはIP専用回線を利用していた。新ネットワークでは、すべてを光ファイバーべースの高速IP回線に切り換えた。
マルチメディア情報で仮説立案の仕組み実現
また、店舗のスタッフに向けて高精細な商品画像とプレゼンテーションツールを活用して豊かな表現をもつマルチメディア情報発信システムを開発した。店舗では、あたかもマーチャンダイザーが目の前で説明しているように商品の特徴やこだわりが分かる。それによって重点商品の導入を高めている。
マルチメディア情報発信の中に、天候や自店周辺の催事情報を集約した営業催事カレンダーがある。このカレンダーは、グラフィック・オーダー・ターミナル(GOT)という端末で参照することができる。営業催事カレンダーと商品情報などの各種情報を相互にリンクさせて仮説を立てやすくし、店舗が計画的に仕事ができるよう支援している。
GOTは、バックヤードのストアコンピュータとつながっている。発注やバランスのいい品ぞろえを店舗が行うために、マトリックス情報や情報分析機能、死に筋が排除しやすい仕組みを提供している。また、ご用聞きに力を入れており、ストアコンピュータに入っている写真や画像を使って、ご用聞きの参考となるチラシを簡単に作成できるようになっている。
店舗のPOSデータを集めて翌朝に分析結果を提供する「本部情報分析システム」のデータ容量は、第5次総合情報システムのときに5.1テラバイトだったが、第6次総合情報システムでは15テラバイトに達した。住宅地か事業所が多いかなどの立地データや学校・行楽地などの施設データを新たに保有し、立地特性に応じた個店対応ができるよう支援している。
新型POSレジスターを07年3月までに全店舗に導入し、本年5月から電子マネー「nanaco」のサービスを始めた。POSレジスターには世界で初めていろいろなタイプのICカードが読み取れるマルチリーダーライターを搭載。ICカード発券機でnanacoを発券するとともに、POSレジスターでマネーチャージやマネー支払い、ポイントの付与や交換が行える仕組みだ。
ソフト開発のカギは明確な役割分担
最後に、第6次総合情報システムにおける事業継続活動ならびに開発の進め方について触れたい。事業継続活動の目的は、店舗の継続的な運営と店舗経営の全面的なバックアップを維持することだ。二重化と二極化を進め、横浜のセンターでシステムを運用できなくなった場合に大阪センター単独で運用できるようにした。
実は、第6次総合情報システムの開発では、トップから「3割のコスト削減にトライしなさい」と言われた。ソフトの開発費は仕事の仕方を変えないと下げられない。開発プロセスを30工程に分け、当社とパートナーの役割分担を明確にした。それによって開発効率が大きく向上した。
最近、増えてきているオフショア開発を成功させるには、上流工程の精緻化が欠かせない。上流工程を精緻にできれば開発期間を短縮させ、品質を向上できる。ユーザー企業とソリューションプロバイダが一体となって役割分担を明確にすることで、効率のいいソフトウエア開発ができると思う。
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