RIMによると北米の導入企業の多くが,BlackBerryをメール送受信や予定表の閲覧・更新のためだけではなく,各種の業務端末として使い始めているという。実際,独SAPや米セールスフォース・ドットコムなどがBlackBerryで使える業務アプリを提供済みだ。
国内でもサードパーティ製品が登場している。ビジョンワークスは6月からカナダのイドコロ・モバイルのリモート管理ソフトの販売を開始した。同ソフトはBlackBerry端末からWindowsサーバーや,SSHを使ったUNIXサーバーへのアクセスを実現。各種サーバーの管理ができる。リモート・デスクトップ(写真4)も使える。また,アボセントジャパンも,BlackBerry端末からのサーバー管理ソリューションを用意している。
写真4●サードパーティのアプリケーション例 Salesforce.comのBlackBerry用クライアントと,リモート・デスクトップ・ソフト「Idokorro Mobile Desktop」。 |
ライトスピードが8月に日本語対応ベータ版の公開を予定するのが,システムの障害復旧知識データベース「Zenprise For BlackBerry」だ。同製品にはBlackBerry関連で約1000の障害事例とその復旧方法が登録されている。このように,BlackBerryを業務で使うための環境は着々と整いつつある。
アプリ開発のための充実したツール群
ユーザー企業が自らBlackBerry用の端末側クライアント・ソフトや,BESと連携するサーバー・アプリケーションを開発することもできる。RIMは「BlackBerry Java Development Environment」や「BlackBerry MDS Studio」(写真5),「BlackBerry Plug-in for Microsoft Visual Studio」といった開発ツールを用意。さらに,BESとSOAPで通信するWebサービス型の業務アプリケーションを開発・実行するためのミドルウエア「BlackBerry Mobile Data System」も提供している。
写真5●RIMが提供するアプリケーション開発環境「Black Berry MDS Studio」 [画像のクリックで拡大表示] |
ユーザー企業の取り組みはこれからだが,一部のSI企業は,早くもアプリ開発に取り組み始めている。インターナショナルシステムリサーチは今春,BlackBerry事業部を新設。BES構築といったSIサービスを提供すると同時に,BlackBerryのアプリケーションを開発する準備も整えた。現在,3名のエンジニアがアプリ開発に注力しているという。
今後はBESの可用性向上策が重要に
BlackBerryの導入が進めば,業務インフラとしての役割は増してくる。BlackBerryが使えなくなると,業務に大きな支障を来すことになるからだ。今のうちから視野に入れておきたいのが,負荷分散や冗長化といったBESの可用性向上策である。
BESは1サーバー当たり2000端末(ユーザー)まで収容できるが,RIMによると負荷を考えれば最大1000~1500端末に留めるのが望ましいという。端末ごとに登録先のBESを変えるのが,最も簡単な負荷分散手法だ(図3)。この際,片方のBESに障害が発生した場合は,BESの管理ツールを使って端末の登録先BESを簡単に変更できる。一時的に端末の登録先BESを切り替えて,その間に復旧処置をすることになる。
図3●考えられるBlackBerry Enterprise Serverの負荷分散と冗長化構成例 [画像のクリックで拡大表示] |
また,BESは独立性の高い複数のモジュールで構成されており,1台のマシンだけでなく複数のマシンで運用できる。そこで負荷の高いモジュールは,別のハードウエアに切り出して運用するのが負荷分散には有効だ。例えば,WordやPDFなどのメールの添付ファイルを端末側に表示する機能を提供するモジュールは,画像処理などを伴うので負荷が高くなりがちである。これを別のハードウエアに実行させる手法などが考えられる。
また,バックアップ用のBESを待機させる,古典的なアクティブ-スタンバイ構成の手法もある。海外では「Neverfail for RIM BlackBerry」という冗長化ソリューションもサードパーティから登場している。
将来的にRIMはBES自体に冗長化機能を実装する予定。しかし,それまではこれらの手法で可用性を高める必要がありそうだ。
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