企業向けに多くの機能を備えるBlackBerryであるが，課題もある。対応グループウエアが少ないことと，国内では1機種の端末しか使えないことだ。
まず，BlackBerryと連携できるグループウエアはExchange，Lotus Notes/Domino，Group Wiseの3種類に限られている。北米市場では問題ないだろうが，国内では「サイボウズ」や「デスクネッツ」といった国産グループウエアの人気も高い。そのため，サイボウズやデスクネッツのユーザー企業がBlackBerryを導入するには，グループウエア自体を乗り換えなければならず，ハードルが高い。
本誌は5月，RIMの創業者でもあるマイク・ラザリディス社長兼共同最高経営責任者にインタビューした際，国産グループウエアへの対応について尋ねた（関連記事）。返答は「もちろん興味はあるし，サポートできればよいと考えている。しかし，グローバル・ビジネスの点から考えると，マイクロソフトやIBMの環境を重視することになる」というものだった。
もう一つの課題である端末の種類だが，現状国内で使えるのは8707hだけ。さすがに1機種では企業のニーズをカバーしきれない。
一方，海外にはGPS（全地球測位システム）や無線LANを搭載し，内線VoIPもサポートする「BlackBerry 8820」や，端末操作のインタフェースとしてトラックボールを備える「BlackBerry Pearl」など，多くの機種がある。しかし，これらの機種が採用する携帯電話の方式はGSM/EDGEなど。NTTドコモが採用するW-CDMA対応の機種は8707シリーズのみである。それ以外の端末は国内では使えない。
もっとも，機種の少なさに関しては，「Black Berry Connect」と呼ぶソフトウエアを利用することで解決できる。次ページからは，Black Berry Connectなど，BlackBerry周辺で続々と登場する各種のソリューションを見ていこう。
サードパーティや開発環境が充実
2007年5月に米国フロリダ州で開催されたBlackBerryのイベント「Wireless Enterprise Symposium 2007」には，サードパーティを含め，多数のBlackBerry関連ソリューションが展示されていた。RIMによると出展社数は100社以上。それらのソリューションを活用することで，BlackBerryの利用シーンは大幅に拡大する。
例えば，RIM自身が提供するBlackBerry Connect（BB Connect）を用いれば，BlackBerry以外のスマートフォンでもBlackBerryのシステムを利用できる。また，サードパーティや独自開発のアプリケーションを使えば，より多くのユーザーがBlackBerryを業務で活用可能だ。
さらに，企業にとって端末数が増えると心配になるのがシステムの可用性。大規模なBlackBerryシステム向けに，各種の可用性向上手法もある。これらを順に解説しよう。
ノキア製端末がBlackBerry対応になる
BB ConnectはBlackBerry端末の機能をソフトウエアで実現するミドルウエア。Symbian OSやWindows Mobile，Palm OSを搭載するスマートフォンで動作し，BlackBerryのシステム，つまりBESとの接続を実現する（写真3）。
 |
| 写真3●BlackBerry Connectをインストールした「Nokia E61」 BlackBerryのメールを閲覧している画面。 |
フィンランドのノキアや英ソニー・エリクソン，台湾HTCなどのスマートフォンに対応する。これらのメーカーのスマートフォンを導入した企業が，BlackBerryのシステムも同時に使いたい場合は，BB Connectが役立つ。
今回，本誌はモバイル・ソリューションを提供するビジョンワークスの協力を得て，ノキアのスマートフォン「E61」上で動くBB Connectを実際に見る機会を得た。E61のBB Connectは，BES経由のBlackBerryのメールと，それ以外のメールを統一的に扱えるものだった。
ただし，BB ConnectはSymbian OSやWindows Mobileなどのスマートフォンを完全なBlackBerry端末に変えるものではない。あくまでもBESを経由するメールや予定表などの基本機能を使えるようにするためのものである。BlackBerryの特徴である強力な端末管理機能は一部しかサポートされない。
なお詳細は不明だが，RIMは4月に「Virtual BlackBerry」を発表，今年後半に提供するとしている。これはWindows Mobile 6の上で動作するBlackBerryのエミュレータに近いものだと思われる。
